「自衛官の人権弁護団・北海道」からの緊急の訴えです。
安倍政権は、来週16日にも「安全保障関連法案」の強行採決に踏み切ろうとしていますが、この安保法制で海外に派遣されることになる自衛隊員は、その家族・恋人は、どんな思いでこの法案の審議を見ているのでしょうか。その声を集めて国会に届けるべく、緊急の電話相談会が開催されます。
以下、弁護団からの緊急の訴えを全文掲載ます。ぜひともご一読の上、お知り合いの自衛隊員やご家族の方に相談会のことをお知らせいただければ幸いです。
(案内チラシをダウンロードできます。→ 9.12 安保法案緊急相談会チラシ.pdf)
自衛隊員と家族、恋人の皆さんへの緊急の訴え
9月12?13日 集団的自衛権行使・安保法案 緊急相談
自衛官の人権弁護団・北海道
現職自衛官及び元自衛官有志
1.政府は、集団的自衛権・安保立法によって自衛隊員が負うリスクについて、隊員の声を聞くこともなく、「増大しない」という答弁を繰り返すのみで、説明責任を果たしていません。
国会は、人権が「立法その他国政の上で、最大の尊重を必要とする」(憲法第13条)ものであるにもかかわらず、政府への追及も独自調査においても余りにも不十分です。
自衛隊員は、兵士である前に市民です。しかも、安保法案に一番利害関係を持つ、この国の主権者です。家族にとっては、市民の皆さんと全く同じ夫・妻、父・母、息子・娘です。
兵士の人権を守ることは、この国の民主主義を守り、軍隊を誤らせないことです。
これらは、人権保障・民主主義と軍隊の存在を両立させようとする西欧諸国では当たり前に認められている原理・原則です。
しかし、日本の自衛隊員は、厳格な「政治活動の禁止」と絶対的な「上命下服」により、一番の利害関係者なのに、質問や意見を述べる機会が全く与えられていません。
自衛隊員を「公僕」として雇い「殉死」まで強いることになる私たち主権者・国民は、その責任を深く自覚して、彼らの代弁者であるべきではないでしょうか。
2.政府は、「後方支援」は前線から遠く離れた安全な場所で、現に戦闘が行なわれていないことを確認して行くので、危険度は高くなく、リスクはこれまでと変わらないと言います。
しかし、この説明を本当だと思う自衛隊員は誰1人いません。この国の政府と国会は、このような虚構の議論で、安保法案を成立させるつもりなのでしょうか。
現代の非正規戦は、いつ、どこで戦闘が発生するか分からず、ひとたび始まれば、戦闘部隊の戦闘力の継続のために、弾薬や燃料等を寸刻も切らさず補給しなければなりません。
自衛隊には、「後方支援連隊」という部隊があり、その中に「直接支援小隊」という部隊があり、それは戦闘部隊に随伴して最前線で直接支援することが任務です。
この一事からも明らかなように、実際の戦争においては、前方も後方もありません。むしろ、相手からすれば、武器や食料などの物資を持ち、戦闘能力の低い補給部隊は、格好のタ?ゲットとなり、襲撃されるリスクが極めて高いというのが、軍隊の常識です。
そして、ひとたび戦闘が始まれば、補給を止めることはできず、かえって強化が要求されます。このような状況で、他国の軍隊や民間人を置き去りにして撤退することなど出来るはずがありません。必ず自衛隊員は戦闘に巻き込まれ犠牲者が出るでしょう。
しかも、後方支援活動は、国際交戦法規(戦時法)上の「兵站活動」です。これが武力行使に当たらないという詭弁は、国際法的に通用しないばかりか、現地に派遣された自衛隊員に国際交戦法規の適用を否定し、国際法上認められる兵士の権利(例えば捕虜の扱い)が認められないことになります。
政府と国会は、このような基本的なことすら整理せずに、安保法案を成立させるのですか。
3.自衛隊員は皆、憲法13条以下の人権保障の他、憲法9条2項「陸海空軍その他の戦力はこれを保持しない」の下、専守防衛を任務とする自衛隊に、憲法を順守すると宣誓して入隊しています。
日本は、第2次世界大戦における「特攻隊」「集団自決」などに象徴される、兵士を虫けらのように扱い、その非人間的な扱いに世界が驚愕した歴史があります。いま再び同じことが起きかねません。国際交戦法規(戦時法)の適用が適用されない海外派兵を、あろうことか、憲法9条があり「専守防衛」の自衛隊員に強いるというのです。
私たち弁護士は、人権擁護を使命とし、法の支配に仕える法律の専門家として、このようなことは絶対許されないと考えます。皆さんの疑問や意見を政府・国会に届けなければなりません。皆さんにはこの国の主権者のとして参政権(憲法15条)・請願権(16条)が保障されています。
4.私たち自衛官の人権弁護団・北海道は、イラク戦争への自衛隊派遣に反対して2004年1月、自民党の元閣僚・防衛政務次官の故箕輪登氏が「専守防衛」の立場から全国で最初に提起した裁判の弁護団が出発点です。そして、空自女性自衛官セクハラ裁判(札幌地裁2006年提訴。2010年勝訴判決・確定)、陸自真駒内基地徒手格闘訓練死裁判(札幌地裁2010年提訴。2013年勝訴判決・確定)をはじめ、北海道において、自衛官や家族の人権に関わる様々な相談を受け、部隊との交渉、公務災害認定、裁判などを取り組んでいます。
イラク派兵差止訴訟全国弁護団連絡会議は、北海道訴訟を皮切りに全国11の裁判所、原告数5700名、弁護士数800名という、戦後最大の憲法訴訟を展開しました。そして、2008年4月17日、名古屋高裁で、平和的生存権の具体的権利性を認め、イラク派兵は憲法9条1項違反とする違憲判決を勝ち取り、同年12月、自衛隊をイラクから完全撤退させました。
この判決は、自衛隊員や家族から、自衛隊の「専守防衛」を確認し、イラク派兵中又は今後派兵される隊員の「平和のうちに生きる権利」を守ったものとして、歓迎されました。
今回の緊急相談会は、この自衛官の人権弁護団・北海道が主催し、全国に800名の弁護団がいるイラク派兵差止訴訟全国弁護団連絡会議の協力で行ないます。さらに、他の人権裁判弁護団、日弁連など様々な弁護団、法律家団体にも協力を呼びかける予定です。
どうぞ私たち弁護士に、皆さんの率直な思い、疑問、意見をぶつけて下さい。皆さんの電話、ファックス、メ?ルをお待ちしています。皆さんの声を政府・国会に届けます。
電 話 0120?210?180 (12日午後3時?8時)
fax 011―210―6662 (12日午後3時?13日午後3時)
メ?ル jieikan-jinken@hg-law.jp (同)
この記事を家族・友達に教える
新着情報
Topics
過去のアーカイブ
Archive