教育論議における『日本の常識は、世界の非常識』
弁護士の佐藤博文です。
昨年、日弁連憲法委員会の一員として、6月の日弁連イギリス教育実態調査、10月の日弁連人権擁護大会教育分科会に参加した私は、教育論議における『日本の常識は、世界の非常識』を実感した1年でした。
日本の子どもの実情を表すデータがあります。ユニセフ・イノチェンティ研究所の調査(2007年)によると、自分を「孤独」と感じる子どもが、日本が29.8%で断トツの1位、2位がアイスランドの10.3%ですから実に約3倍。イギリスは5.4%。子どもの幸福度世界1位と言われるオランダは2.9%で日本の10分の1です。
傷つかないためには 気づかないこと
傷つかないためには 感じないこと
傷つかないためには 見ないこと
傷つかないためには 言わないこと
傷つかないためには 聞かないこと
傷つかないためには 望まないこと
傷つかないためには 諦めること
傷つかないためには 装うこと
傷つかないためには 自分を見せないこと
これは、現代の子どもの「生きづらさ」を表現した記述です。おとな社会の「生きづらさ」そのものではないでしょうか。これを深刻であると認識し、変えようとする問題意識を持たずして「教育」や「子ども」を論ずることはできないと思います。
日本の子どもの学力低下も問題とされています。PISA(OECD生徒の学習到達度調査)の国別順位で、日本はかつて1位だったのに、今や読解力15位、数学的リテラシー10位と落ち込んでおり(2006年)、深刻だと。ちなみに1位はフィンランドです。
そこで日本では、2007年から全国一斉学力テストの再開、学校評価制度の導入、教育職の階層化(管理統制の強化)が行われました。学校、教師、生徒に目標を課して競争させれば成果が上がるという発想です。2006年9月に「教育再生」を掲げて政権についた安倍首相の目玉政策でした。
しかし、学力世界1位のフィンランドには、全国一斉学力テストがありません。PISAの順位向上と教育への競争主義の導入を掲げた英サッチャー政権の「教育改革」は失敗に終わり、政権交代しました。
学力は、体力や運動能力、芸術性、協調性など多様な人格の一側面にすぎず、他の側面と相乗的に発展するものです。自由で多様な、そして自主的、批判的精神に満ちた全人格的な教育こそが真の教育であり、それが「世界の常識」だと確信しました。
昨年の総選挙で再登板した安倍首相は、サッチャー教育改革の信奉者であり、自民党の仲間と共にイギリスに行き「サッチャーに学ぶ教育正常化への道ー英国教育調査報告」(2005年4月PHP研究所発行)に登場しています。安倍氏は、新年早々に再び「教育再生実行本部(仮称)」設置を掲げましたが、これ以上日本の子どもたちを何処に導こうというのでしょうか。
2013.1.7記
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