目次
1 恵庭市による調査委員会設置
弁護士の中島哲です。
2023年6月16日付けの北海道新聞朝刊に「障害年金を横領された」「恵庭の牧場提訴へ」という記事が掲載され、私のコメントも掲載されました。
牧場による知的障害者虐待の実態については、前編をお読み頂ければと思いますが、後編で注目したいのが、恵庭市の対応です。
まず、同日付けの北海道新聞の記事によると、「恵庭市は調査委員会を設けて事実関係を確認中」とのことでした。しかし、当事者である3人のところに、恵庭市の職員が、事実関係を確認するために話を聞きに来たということは、私が知る限りありません。
また、「調査委員会を設けた」とか「事実関係を確認中」という話すら、この新聞報道で初めて知りました。
当事者の知らないところで設置され、進められる「調査委員会」など、通常は考えられないことです。
2 市議会における答弁
北海道新聞による報道を受けて、2023年6月21日の恵庭市議会厚生消防委員会で、この問題が取り上げられました。
調査委員会設置ということを知らなかったので、弁護団員も、委員会を傍聴し、やりとりを聞いてきました。
恵庭市側の説明によると、「調査委員会」は、当事者が主張する事実があったのか、あるいは事実がどうであったのかについて調査することを目的としており、委員会の構成メンバーは市役所職員4名、委員会開催は5回、委員会の中で状況確認や当時の担当職員の出席による聞き取りなどを行っているということでした。
市議会議員からは、与野党問わず複数の議員から質問がなされ、その中には「第三者委員会を設置すべきではないか」という質問もありましたが、その質問に対する回答はなされませんでした。
調査委員会を設置して、事実関係を調査するのであれば、当然に第三者を入れるべきだと思いますし、なにより、当事者の話を聞くことが肝要だと考えます。
3 公開質問状の受け取り拒否
弁護団としては、北海道新聞の報道で初めて知ったこと、また、市議会答弁で分かったことや分からなかったことがあったことから、6月26日に、恵庭市役所に公開質問状を持参しました。
しかし、恵庭市役所の職員は、「受け取れない」の一点張りで、公開質問状の受領を拒否しました。もちろん、質問事項を見た上で、一定の事項については「回答できない」との返答があることはあり得ると思っていましたが、質問事項を見ようともしないで、受領拒否されたことには正直驚きました。
私から、「受け取らないことについて法律や条令の根拠がありますか」と尋ねたところ、「ありません。」と明言した上で、「市としての判断です。」との回答でした。
4 公開質問状の内容
以下、公開質問状の内容について、引用します。少し長いですが、ぜひお読み頂いて、受け取ることがそもそもできないようなものなのか、ご判断頂ければと思います。
4-1 調査委員会の設立根拠について
(1) 保健福祉部障害福祉課事案調査委員会(以下、単に「調査委員会」と呼ぶ)の設置は、恵庭市例規類集のいかなる条例・規則に基づいてなされたか。
(2) 誰の指示・判断で調査委員会の設置がなされたか。
(3) 調査委員会の設置要綱を作成しているか否か。作成しているのであれば、同要綱の開示を求める。作成していないのであれば、その理由の説明を求める。
(4) 調査委員会の権限、調査方法、設置期限、調査内容の発表方法はどのように定められているか。
4-2 調査委員会の設置目的について
(1) 事実確認を設置目的としているとの説明であるが、誰に対していかなる方法で説明・発表する目的で、事実確認をしているのか。
(2) 事実確認後、恵庭市の障害福祉に誤りがあるとしたら、問題点を把握し、真摯に反省・謝罪し、今後の障害福祉行政の改善を行うことも目的としているか。
4-3 調査委員会の構成メンバーについて
(1) 調査を実施する以上、調査の中立・公平性の確保及び客観性が求められると考えられるところ、構成メンバーの選出において、中立・公平性、客観性の担保及びその配慮はどのようになされたのか。
(2) 部長職1名、次長職1名、課長職1名、主査職1名の計4人とは、保健福祉部の部長、次長、課長及び主査の計4人という理解でいいか否か。
(3) 保健福祉部の部長、次長、課長及び主査の計4人のみが構成メンバーとなったのはいかなる理由によるか。
(4) 調査委員会の構成メンバーである4人のうち、2016年〜2017年当時の担当者などの利害関係者が含まれているか否か。含まれている場合、その職員の氏名、当時及び現在の役職名は何か。
(5) 調査の中立・公平性確保及び客観性の担保のために、外部有識者を入れた構成にする意思はあるか否か。意思があるとしたら、いつまでに、どのような選考手続を経て選出するか。意思がないとしたら、その理由は何か。
4-4 調査の進捗について
(1) 委員会が開催された5回の日程は、具体的にいつか。
(2) 5回の委員会日程毎に、どのような資料に基づいた状況確認ないし当時の担当職員への聞き取りをしているのか。委員会日程毎の調査事項、調査に用いた資料、出席した職員名を明らかにされたい。
(3) 調査はあと何回程度行われ、調査の終了時期はいつを予定しているか。
(4) 議事録を作成しているか否か。作成しているとしたら、その開示を求める。作成していないとしたら、その理由は何か。
(5) 上記(1)乃至(3)について回答を拒否する場合、その理由は何か。
4-5 調査内容の報告・発表
(1) 公費による調査委員会である以上、調査経過及び調査内容は、市民の財産であると考えられるところ、市民への報告・発表はいつ、どのようになされるのか。
(2) 市議会への報告・発表は、いつ、どのようになされるのか。
(3) 調査委員会の設置目的との関係で、裁判に関わる事柄になると想定されていることが、いかなる意味で、説明しないことの正当化理由となるのか。
5 今後について
当事者たちも、弁護団も、当初は恵庭市に対する訴訟提起を考えておりましたが、その後、調査委員会の設置を知るに至り、恵庭市による誠実な対応を得られるのであれば、訴訟によらない解決もあり得るのではないかと期待しました。
しかし、現在のところ、恵庭市の対応は、誠実とは評価しがたいもののようです。
本来避けられたはずの裁判を避けられないのだとすれば、それはとても残念なことです。果たして恵庭市に自浄作用があるのか、注視して頂ければ幸いです。
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