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 弁護士の佐藤博文です。

 12月9日、福岡高裁(増田稔裁判長)は、上級生らから繰り返し暴力やいじめを受けたとして、防衛大学校(訴訟上は国が被告)を相手に損害賠償を請求していた元学生(原告)に対して、263万円の支払を命じる逆転勝訴判決を言い渡しました。
 地裁判決が、何を恐れたのか「アンタッチャブル防衛大」とも言うべき敗訴でしたので、私は代理人として責任を果たせて感無量となりました。

 問題になったのは、規律と自律性を養成するという名目で、上級生が下級生を指導する「学生間指導」というものの実態です。これが、暴力やいじめの「口実」になっていました。
例えば、以下は防衛大が、自ら調査して認定している事実で、判決でも認定されています。
 「 平成25年6月頃、■■元学生(4学年)は、学生舎の居室が同じ1学年が電話対応、清掃などにおいて不適切な行為があった際に付けていた「粗相ポイント」を精算するとして、1学年5名に対し、乾いたカップ麺を食べさせ、カルピスの原液の一気飲み、腹を踏む、風俗店に行かせて動画を撮らせる等の理不尽な行為を複数回行った。
■■学生は風俗店に行くことを断ったことから、■■学生(1学年)に見張りをさせた上で、■■学生(1学年)に下半身を露出させ、下腹部にアルコールをかけ、火を点けて火傷を負わせ、その状況を■■及び■■学生(1学年)に撮影させ、同室のLINEへ動画を投稿させた。」

 防衛大は、自衛隊幹部を養成する唯一の士官学校です。自衛隊幹部はほとんど皆、防衛大の卒業生です。防衛大は、特別職の国家公務員で、授業料が免除され、衣食住が国費でまかなわれ、さらに学生手当月額約10万円、賞与年額約32万円が支給されます。防衛大を卒業して自衛官になり、1年の幹部候補生学校を卒業後してすぐに小隊(10〜50人程度)の指揮官になります。
従って、防衛大生の教育訓練の内容や実態は、部下となる多くの自衛隊員の人権問題につながり、日本国民の命と生活を守ることを使命とする自衛隊の体質を規定することになります。
上告期限は12月23日です。国は上告せず、防衛大教育の抜本的な改善を図るべきです。そして国民にその取り組みをオープンにすべきです。

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