弁護士の橋本祐樹です。
司法試験に合格した後1年間、国により義務づけられる研修を司法修習と言います。弁護士、検察、裁判官のもとに配属され、法曹三者のそれぞれの目線で法律実務を身をもって学ぶ場です。この1年で、修習終了後の実務開始に必要なスキルとマインドを醸成しなければならないため、司法修習生には修習専念義務が課され原則としてアルバイトが禁じられています。
その間の生活保障として、私が司法修習をしていた頃までは国から給料が出ていました。しかし、私たちの司法修習の翌年である2011年から、給料が出なくなりました。
つまり、司法修習生は無給で研修をしなければならないのです。アルバイトができないので、生活費は国からの貸付(貸与金といいます)か、家族からの仕送りに頼らざるを得ません。
多くの法曹志願者が大学・法科大学院で奨学金を借りており、その平均は300万円にものぼります。それに加えて約300万円の貸与を受けてしまったら、返すのが大変です。
そういう理由で、法曹志願者が激減しています。2015(平成27)年度入学のための全国の法科大学院の受験者数はのべ9351人であり、2004(平成16)年度の受験者数(40810人)の4分の1以下に、貸与制(無給制)に移行した2011(平成23)年度(20497人)と比べても半数以下にまで落ち込んでいます。また、2015(平成27)年度に実際に法科大学院に入学した者は、過去最低の2201人で、学生を募集した54校のうち50校で定員割れとなっています。
このような状況に危惧を抱き、権利の守り手を国が責任をもって育成すべきとの観点から、弁護士会やビギナーズ・ネット(http://www.beginners-net.org/)はこれまでも活動をしてきました。
2014(平成26)年12月からは、全国52の弁護士会、ビギナーズ・ネット等が協力して、国会議員の先生方に対して「司法修習生への給費を実現すること」について賛同を得るための説明等を行い、給費の実現をはじめとする司法修習生への経済的支援に関する賛同メッセージをもらう活動をしてきました。何度も何度も議員さんの事務所を訪問してきたのです。
そして、2016(平成28)年1月、ついに全国会議員(717)の過半数(359)を上回る議員さんから賛同メッセージが得られました。
現在も増加を続けており、合計362名の議員さんからメッセージをいただきました。内訳は衆議院251通、参議院111通です(1月20日現在)。野党のみならず、与党の議員さんからもたくさん賛同メッセージをいただいております。
北海道では、札幌は対象議員20名中18名、旭川は対象議員2名中2名、函館は対象議員2名中2名、釧路は対象議員4名中3名から賛同メッセージをいただいており、全国でも最高レベルのメッセージ獲得率でした。
また、賛同メッセージ獲得過半数達成にあわせて、全国52の弁護士会と日弁連が全国一斉で司法修習生への給費の実現を求める会長声明を発表し、司法修習生に対する給与の支給継続を求める市民連絡会とビギナーズ・ネットもそれぞれ声明を発表しました。
札幌弁護士会の会長声明
https://www.satsuben.or.jp/info/statement/2015/14.html
日弁連の会長声明
http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/statement/year/2016/160120.html
今国会では追い風が吹いています。
今通常国会で給費を実現させるために、今後、より一層の活動を行おうと思っております。国の三権の一翼を担う司法制度についての人材育成が「研修は自己負担ね」というブラック企業のようなものであり続けたら、司法制度の受益者たる国民の権利擁護に悪影響が出てしまうと考えているからです。
司法修習生への給費の実現に対するみなさまのご理解とご協力をよろしくお願いいたします。
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