弁護士の橋本祐樹です。
給費制廃止違憲訴訟札幌66期訴訟の第1回口頭弁論期日が行われました。
司法試験合格後1年間義務づけられる司法修習において、スキルとマインドを醸成しなければならないため、修習専念義務が課されアルバイトが禁じられることが要請されるにもかかわらず、2011年から給料が出なくなりました。それはおかしいということで、「無給制」(実態をごまかされて「貸与制」と呼ばれることもあります)のもとでの修習を終えた弁護士らが次々と提訴しています。給費制の廃止は人権侵害であり違憲であると主張しています。
無給制第1期生の65期元司法修習生は、東京、名古屋、広島、福岡の各地裁で、合計210名の原告で裁判を起こし、現在も闘っています。
無給制第2期生の66期元司法修習生も、東京、熊本、そしてここ札幌で、約160名で裁判を起こしました。代理人は全国で600名を超えています。札幌では、札幌弁護士会に登録した66期元司法修習生の約4人に一人が原告です。
札幌訴訟の第1回期日では、原告団長の小林弁護士、全国弁護団長の宇都宮健児弁護士、札幌弁護団長の高崎暢弁護士から、それぞれ意見陳述がありました。
小林弁護士は、自らの家庭の経済状況などを語りながら、幸運にも司法試験に合格できたが無給であったことから苦労したエピソードや、「司法が,困っている人も含め,どのような立場にいる人に対しても平等に接するものであるのに,その司法の担い手となるための入口で,裕福な家庭の出身か,経済的な余裕があるかどうかという選別が行われている現状に,私は非常に強い違和感と危機感を覚えます。」と、無給制の本質をえぐった陳述をしました。
また、「私は,このような現状が今後も続き,志ある後輩や優秀な後輩が経済的事情のみをもって法曹への道を断念せざるをえない状況となるのを防ぐため,本訴訟の提起に至りました。本訴訟は,決して,自分たち原告11人の権利のみを主張するものではありません。将来の司法の担い手,ひいては将来の司法制度そのもののために,現状を変えるために訴訟を提起しました。」と本訴訟を提起した理由を、クールに、しかし熱く語っていました。
宇都宮弁護士は、戦前、弁護士は判事や検事より一段下に置かれたこと、弁護士試補の修習の内容も判事や検事の卵である司法官試補とは異なり無給であったこと、それが原因で人権弾圧を抑止できなかったこと、その反省の上に統一修習と給費制が導入され、それを定めた裁判所法が日本国憲法と同じ日に施行されたこと、など法曹養成の歴史に遡った陳述をしました。また、政府が給費制廃止の理由として挙げる理由には、全く根拠もないことをデータを示しながら説得的に話しました。
高崎弁護士は、「どうか,給費制が廃止された現在の修習の実態,そして,若い原告らが体験した,経済的理由から,またそれに派生して起きた,あらゆる辛酸をしっかりと受け止めて欲しい」と熱い前置きをしたうえで、アンケートから浮き彫りになった無給下の修習生が「食費を切り詰める,病院に行くのを控える,書籍は買わない等の状態におかれている」こと、これにより法曹倫理という高度な倫理観、人権感覚、正義・公平というバランス感覚、社会人としての知識・素養を欠いた法曹が輩出されることは将来に渡っての社会的な損失になることを話しました。
いずれの意見陳述も素晴らしく、裁判官や被告国の代理人である訟務検事も、頷きながら聞いているように見えました。
各意見陳述の後には、思わず拍手をしそうになりました。
80人ほど入る法廷の8割程度の傍聴者がおり、その中には一般の方も多くいました。傍聴をした一般の方からは、「なんでこんな制度になっているのか理解できない」「この裁判、応援します」などというお声がけもいただきました。
先輩弁護士のみなさんも多数傍聴にかけつけてくれ、原告のみなさんは心強かったはずです。先輩弁護士は、無給制により、戦後の司法の民主化の中で獲得されてきた価値が無給世代の後輩へ受け継がれなくなることを危惧しているのだと思いました。
給費制廃止違憲訴訟札幌訴訟の第2回口頭弁論期日は、4月23日(木曜日)11:30から、札幌地方裁判所805号法廷(8階)であります。
次回も意見陳述を予定しています。
みなさま、お友達を誘って、傍聴にいらして下さい☆
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