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目次

弁護士の小野寺信勝です。

1 育成就労の創設

 政府は「技能実習」制度を廃止し、「育成就労」を創設することを決定しました。

 技能実習制度を巡っては「国際貢献」の目的と、人材確保の制度になっている実態の乖離が批判されていました。人材の確保を目的とする「育成就労」が創設されることにより制度が実態に沿うことになります。

2 転籍

(1) 期間制限

 しかし、報道を見る限り、「育成就労」創設によって現状改善の期待を持つことができません。

 技能実習制度では、劣悪な労働環境や、深刻な人権侵害が生じていました。その原因の一つは、3年間は本人の意向による転籍ができないことにあります。

 育成就労制度では転籍制限の緩和が焦点とされていました。

 当初、有識者会議は1年超働けば転籍できるとする案が示されました。しかし、自民党内から地方からの人材流失を危惧する意見が噴出したため、政府は、当面の間、対象分野ごとに1年から2年の範囲で転籍が制限されることとされました。育成就労は3年間、最大2年間転籍できないとされると、転籍緩和は限定的になります。

(2) 日本語能力

 加えて、転籍の要件として、一定程度以上の日本語能力が必要とされました。しかし、同じ在留資格内での転籍に、入国時に必要とされる以上の日本語能力を要件とする理由はないはずです。この要件は転籍に不必要なハードルを設けるものです。

3 人材確保

 技能実習と比べれば育成就労は「多少マシ」なのでしょうが、看板の掛け替えと思わざるを得ません。

 受入側からみれば、都市部への人材流出の懸念はもっともな意見ですが、長期的にみれば転籍制限によって解決する問題ではありません。受入側には労働環境の改善などの努力が必要になりますが、その対応にも限界があります。また、人材流出の懸念は外国人に限った話ではありません。政府には、育成就労に留まらない地方の人材確保のための施策が求められています。

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