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 弁護士の加藤丈晴です。
 HIV不当内定取消訴訟の判決確定を受けて、弁護団声明を出しましたので、事務所のホームページでも全文をご紹介いたします。

         HIV不当内定取消訴訟判決を受けて

                     2019(令和元)年10月9日
                     HIV不当内定取消訴訟弁護団
                     弁護士  加藤 丈晴
                     弁護士  須田布美子
                     弁護士  横山 浩之

 本年9月17日、札幌地方裁判所において、社会福祉法人北海道社会福祉事業協会(以下、「協会」といいます。)が経営する被告病院の社会福祉士の採用面接を受けた男性が、採用面接においてHIV陽性者であることを伝えなかったことを理由に内定を取り消された事件の判決がありました。
 この訴訟の中では、採用面接においてHIV陽性者であることを聴取することの可否、告知義務の有無、告知しないことの相当性及び原告の過去の医療記録を採用の判断において利用したことの違法性が主たる争点となっていました。
 本判決は、採用面接において(1)HIV陽性者であることを告知する義務はないこと、(2)HIV感染の有無を確認することは原則として許されないことを明言し、それを前提に、(3)原告がHIV感染の事実を否定したことは自らの身を守るためやむを得ず行ったもので原告を非難することはできないとして、採用内定取消しの違法性を認定し、さらにプライバシー侵害も認めました。本判決は、HIV陽性者の方々が就職において必ず直面していた「HIV陽性者であることを伝えなくてはいけないのか」という大きな課題に司法判断を示した初めての判決であり、上記(1)ないし(3)の内容はHIV陽性者の方々の背中を後押しする極めて画期的な判断です。
 これに対し、被告病院を経営する協会は、本年10月1日、「私どもはあくまで原告が虚偽の発言を複数回にわたり繰り返したことにより信頼を失い、職員としての適正に欠けたための『採用内定取消し』の考えは一貫して変わっておりません。…(中略)、虚偽の発言が非難されないのなら、とても今後の議論にはなり得ません。」(一部抜粋)などというコメントを発表して本判決を非難しました。
 しかし、本判決を踏まえれば、協会が「虚言」と揶揄している原告の言動は、被告病院が個人情報を違法に利用し、採用面接において質問してはいけないことを質問した結果、これに対してやむを得ずなされたものであることは明らかです。
 このような協会の態度は、かかる違法行為を自ら行った事実から目を背け、上記(1)ないし(3)の意義を全く理解しないものであるとの誹りを免れず、正に本判決が指摘する「患者に寄り添うべき医療機関の使命を忘れ、HIV感染者に対する差別や偏見を助長しかねないものであって、医療機関に対する信頼を裏切るもの」です。
そして、本判決に不服があるのであれば、控訴した上で公開の法廷において正々堂々と自らの主張を述べ、改めて司法判断を求めるべきであったにもかかわらず、控訴もせずに本判決に対する非難に終始する協会の対応は、本判決の司法判断に真摯に向き合う姿勢が全く感じられない極めて不誠実な態度と言わざるを得ません。
 我々弁護団は、不誠実な協会の対応を強く非難するとともに、全国各地の医療機関が本判決の内容を真摯に受け止め、本判決が指摘する「患者に寄り添うべき医療機関の使命」を再確認して、HIVに対する差別や偏見のない医療現場が実現されることを切に願うものであります。

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