弁護士の小野寺信勝です。
外国人労働者の受入拡大を目指して「特定技能」の在留資格を創設する入管法改正案が衆議院法務委員会で強行採決され、本会議でも可決されました。
国会審議では技能実習生の深刻な人権侵害に注目が集まりました。この問題を通して外国人労働者の人権侵害を防止する取り組みが議論されることを期待していましたが、技能実習制度は温存され、人権侵害防止のための具体的施策が示されることもありませんでした。
ある程度予想されていたこととはいえ、彼・彼女らの被害に耳を傾けずに、労働力としてしか見ない政府の姿勢に怒りを感じています。
入管法改正の原稿を書くために実習生関係の新聞記事を整理していたら、以前相談を受けた実習生の記事を見つけました。
大分県由布市の縫製工場で働く中国人実習生からの相談でした。日本に住む実習生の親族から窮状を訴える手紙が届き、相談を受けることになりました。
待ち合わせ場所の地元のスーパーで20代の中国人の女性6名と会いましたが、一見して痩せこけていて普通でないことがわかりました。
ファミレスに移動して話を聴きましたが、その内容に驚きました。毎日朝8時から深夜2時〜4時まで働き、その間の休憩時間はわずか10分。食事をとる時間がないのでポケットに忍ばせていたビスケットで空腹を紛らわせていたと言っていました。残業代は出来高制で月にわずか1〜2万円、時給換算すると数十円でした。慢性的な頭痛と睡眠不足の辛さを訴えていました。
また、同僚が過労と栄養失調のため目が見えなったと言っていていました(記憶がはっきりしないのですが、目が悪くなったと言ったかもしれません)。しかし、社長に目が不自由になったことがばれると帰国させられると思い、皆で彼女の仕事を引き受けて彼女の不調がばれないように社長から庇っていたそうです。
想像を絶する被害に保護をすることを提案しましたが、固辞されてしまいました。というのも、会社の不正行為が発覚すると、受け入れている実習生全員が帰国させられるからです。実習生は母国で多額の借金をしているので、実習途中で帰国することは死活問題です。これほど深刻な被害に遭いながらも、自身又は仲間の借金と母国の違約金契約を慮って声を上げることができませんでした。
後に私たちと会っていたことを社長に知られ、帰国を迫られることになってしまいました。幸い北九州市の労働組合が保護してくれましたが、彼女たちを助けることができなかっただけでなく、私たちのせいで危険な思いをさせてしまったことに無力さを痛感することになりました。
強行採決のニュースを見ながらふと彼女たちのことを思い出しました。
彼女たちのうつろな表情は今も忘れることができません。
21世紀の日本の出来事です。
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