弁護士の内田信也です。
1.私は、NPO法人子どもシェルターレラピリカの理事長に就任しました。「子どもシェルター」という言葉になじみのない方もいらっしゃる思いますが、これは、虐待や非行などの困難を抱え、家庭や施設に居場所を失った、14、15歳から19歳までの十代後半の子どもたちのための緊急避難所です。こうした子どもたちは、18歳未満であれば、児童福祉法上の要保護児童に該当するのですが、児童相談所の一時保護所は定員を超える満員状態ですし、思春期の子どもへの個別対応ができる体制になく、すぐに保護することができません。また、18歳以上であれば、そもそも一時保護もできません。子どもの人権救済活動の現場で、「今晩、帰る場所がない」という、子どもたちの相談を受けてきた弁護士や児童福祉関係者・市民らが危機に瀕した子どもたちの命を守りたいという願いから、2004年6月に東京で全国で初めての子どもシェルター「カリヨン子どもの家」が開設されました。以来、現在まで神奈川・愛知・岡山・広島・京都・福岡で地域色のある子どもシェルターが開設されてきましたが、この度札幌でも、一年間の準備期間を経て、本年10月から女子専用の子どもシェルター「レラピリカ」(アイヌ語で「美しい風」という意味)を開設することになりました。現在、活動スタートへ向けて、最後の準備を進めているところです。
2.東京の「カリヨン子どもの家」の創設者である坪井節子さんによりますと、これまでの8年間で、カリヨンを利用した子どもたちの数は、のべ210人を超え、圧倒的に女子が多く、避難の主たる理由は、虐待であり、抱えている困難は、離婚再婚が繰り返された複雑な家庭、親の病気、貧困、本人の心身の病、不登校、自傷行為、非行等々がいくつも重なっており、中でも、虐待の後遺症と思われる解離、うつ、パニックなどの精神症状を呈する子どもの多さに驚く・・・とのことです。
そういう子どもが東京だけにいるわけではありません。この問題は「見ようとしなければ見えない」性質のもので、児童福祉の最前線で日夜格闘しているみなさんのお話によると、札幌にもたくさんいるのです。
3.何故、私たちは子どもの問題にみな心を痛めるのでしょうか。実は、子どもの問題は私たち大人の問題に直結するのです。子どもが健やかに伸び伸びと成長できる社会は、高齢者にとっても安心して生きていける社会に違いありません。ですから、子どもが辛い思いをする社会は、高齢者にとっても辛い社会なのです。この二つは、間違いなく共鳴している問題で、私たち自身が平等に高齢者へ向かって行くことを思えば、子どもの問題は人ごとではありません。子どもへの人権侵害は、私たち大人への人権侵害でもあるのです。そう考えると、子どもシェルターの開設は、私たち大人に課せられた使命といってよいと思うのです。
4.もっと札幌の地に引き寄せてみると、札幌には「子どもの権利条例」があるのですが その中に、8条で「安心して生きる権利」を定めています。
(1) 命が守られ、平和と安全のもとに暮らすこと
(2) 愛情を持って育まれること
(3) いじめ、虐待、体罰などから心や体が守られること
(4) 自分を守るために必要な情報や知識を得ること
(5) 気軽に相談し、適切な支援を受けること
子どもの権利を大切にすることは、子どもが自分の人生を自分で選び、自信と誇りを持って生きていくように励ますことです。それによって子どもは、自ら考え、責任を持って行動できる大人へと育っていきます。そういう大人たちによって私たち高齢者が安心して生きていくことができるのです。だから、私たちは子どもの問題に心を痛めるのです。単なる感傷や同情ではありません。
5.これまでの設立行為は、弁護士が中心になってやってきましたが、実際に活動が始まって子どもたちをケアして、自立へ誘うためには、医療や福祉の専門家との連携がどうしても必要です。きれいごとではすまされない、厳しい子どもたちの現実があることをいろんな人から指摘を受けて、その責任の重さにおしつぶされそうになりながら、若い弁護士たちを中心に「身の丈にあったシェルター」を目指してやっております。
そんな子どもシェルターの趣旨をご理解いただき、みなさまのお力添えをいただければ幸いです。
HPのアドレスはhttp://rera-pirika.jp/ (現在作成中)です。
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