北海道、札幌を中心とした北海道合同法律事務所が発行する「事務所通信:北の峰」の2011年 新春号をご紹介致します。

 北の峰のご案内

巻頭言  

新年あけましておめでとうございます

 新年明けましておめでとうございます。
 昨年三月一一日の東日本大震災と東京電力福島第一原発の事故は、日本の将来と国民の生き方を問うています。火事場泥棒的に儲けを企む大企業主導の復興か、被災者や被災地域を主役とする自主的自立的な復興か。
 復興にこそ、個人の尊厳、民主主義、平和主義が貫かれなければならないと思います。
 このようなとき、昨年一一月、防衛省沖縄防衛局長が、米軍普天間飛行場代替施設建設の環境アセスメント提出時期について、「犯すときに、『これから犯しますよ』と言いますか」と発言しました。本当に驚きです。わが国の政治・行政の中枢の腐敗・劣化が深刻であることを物語っています。本当に情けなく悲しい気持ちになります。
 女性の人権を踏みにじり、沖縄県民の意思を踏みにじる二重の蔑視です。東北復興も米軍基地問題も、問題の根は一つだと思いました。
 今こそ私たちは、人間らしい感性と主権者の自覚に立とうではありませんか。私たち以外の誰かが解決してくれるわけではありません。
 今年が皆様にとって良いお年でありますように。ご健勝を心よりお祈り致します。

二〇一二年一月 北海道合同法律事務所一同

「泊原発の廃炉をめざす会」と「泊原発の廃炉訴訟」 弁護士 渡辺 達生

『一』

 三月一一日の東日本大震災の後、福島第一原子力発電所の事故は、レベル七と評価され、チェルノブイリ事故と並ぶ、史上最悪の原発事故となってしまいました。この事故による放射能の被害は、未だに収束を見せておらず、多くの福島県民が今も放射能の恐怖にさらされ、少なくない県民が県外に避難をしています。

 このような原発事故の被害に直面し、全国各地で、反原発の世論が大きく盛り上がっていますが、北海道では、泊原発の廃炉をめざす会が結成され、訴訟が提訴されました。

『二』

泊原発の廃炉をめざす会ホームページより掲載

 泊原発は、一号機(一九八九年運転)、二号機(一九九一年運転)、三号機(二〇〇九年一二月運転)の三つの原子炉があります。泊原発は、札幌から約一〇〇qの所にあり、もし、福島第一原発で起きたような事故が、不幸にも泊原発で起きたとしたら、札幌でも相当程度の放射能被害を受けることになります。

 泊原発の廃炉をめざす会は、今年の七月に有志により呼びかけがなされ、七月七日の結成集会には三〇〇人以上の市民が集まりました。その後も、各地で学習会が開催され、そこでも呼び掛けがなされ、数カ月で会員は一八〇〇名を超えています。そして、そのうち六一二人が原告となって、二〇一一年一一月一一日、札幌地方裁判所に訴訟を提訴しました。

『三』

 泊原発の廃炉訴訟は、人格権に基づく民事訴訟で、泊原発を所有している北海道電力に対し、原発の運転の停止だけでなく、その廃炉を求めています。

 人格権を脅かす原発の具体的な危険性としては、@福島第一原発の事故によって安全指針類が原発の安全性を担保するものではなかったことが明らかになっており、そのような安全指針類を基準として審査、許可を受け、設置、維持されてきた原発は福島第一原発同様、大地震等によって重大事故が発生する危険性があること、A泊原発の沖合には設置許可時点では確認されていなかった活断層が存在しており、泊原発は設置許可時に想定されていた以上の地震やそれに伴う津波に襲われ重大事故が発生する危険性があること、等を主張しています。

『四』

 年明けには、期日が決まり、いよいよ裁判が始まります。これまで、全国で多数の原発の安全性を問う裁判が提訴されていますが、原告の請求を認めた判決は二つしかなく、その二つとも上級審で覆されています。原発の安全神話の問題性は、この間、明らかになってきていますが、原発の安全神話に司法が加担してきたことは否定できません。

 原発問題は、人権の問題であり、司法の責任として、原発の具体的な危険性を明らかにし、原発が人類と共存できないことを明らかにしていきたいと思います。訴訟の詳しい内容等については、泊原発の廃炉をめざす会のホームページ(http://tomari.sakura.ne.jp/)をご覧ください。

北海道タクシー労働者支援弁護団活動のご報告 弁護士 山田 佳以

「札幌圏のタクシー運転手の現状」

 平成一四年、小泉政権のもとで道路運送法が改正され、タクシーの規制緩和が進められました。規制緩和は、タクシー業界において、需給バランスを無視した大幅な増車、運賃のダンピング競争、労働コストの徹底的な削減とこれによるタクシー運転手の労働条件の劣悪化をもたらしました。

2011年12月20日タクシーシンポジウム会場風景

 北海道運輸局タクシー地域協議会資料によれば、札幌圏でも、規制緩和によりタクシー車両数が一割以上増えた一方で、タクシー会社の収入は二割近く減少し、そのしわ寄せは運転手の人件費に及びました。札幌圏のタクシー運転者の平均年収は、約二一三万円(平成二〇年度)と、規制緩和前に比べると一〇〇万円近く減り、道内全産業平均年収の半分にも満たないうえに、世帯別の生活保護基準以下となっています。

 さらに、規制緩和以降、タクシー運転手の非正規雇用化が進行し、タクシー運転手の大半が有期雇用の嘱託社員という不安定な地位に置かれ、契約の更新拒絶をおそれ、会社に対し違法な労働条件の改善を求めることすらできない運転手も多いといいます。

「北海道タクシー労働者支援弁護団結成」

 北海道タクシー労働者支援弁護団は、労働組合と連携したタクシー会社との交渉や、法的手続(労働審判、仮処分、訴訟)、必要な政策提言等の様々な手段により、タクシー労働者の権利を実現するとともに、タクシー労働者の置かれている過酷で劣悪な労働条件を改善することを目的として、札幌弁護士会の弁護士一三名で結成されました。

 弁護団は、道内のタクシー会社各社に対する未払賃金支払請求訴訟や不当解雇に対する地位保全の仮処分の申立て等の裁判活動のみならず、電話相談(タクシーホットライン)やシンポジウムの開催等の活動を積極的に行っています。

「完全歩合給制は労基法三七条違反とする勝訴判決を得ました」

 完全歩合給制とは、タクシー運転手の給与を、営業収入(売上)の一定割合とする賃金計算方法です。規制緩和後の競争激化と市場縮小のもとで、過去と同等ないしそれ以上の売上を上げることが困難となった多くのタクシー会社が、諸経費の七割以上を占める運転手の人件費(給与)を削減すべく完全歩合給制を導入しています。

 平成二三年七月二五日、札幌地方裁判所は、完全歩合給制は、時間外・深夜・休日労働の割増賃金の支払を使用者に義務付けた労働基準法三七条に違反するとの原告らの主張を認め、会社に対して未払賃金の支払いを命じる判決を下しました。なお、会社は、判決を不服として控訴しため、現在、控訴審における審理が継続しています。

「おわりに

 タクシーは、利用者の個々のニーズに応じてドアからドアへ乗客を運ぶ利便性のみならず、今後、高齢化が進むなかでのお年寄りの足として、また、鉄道やバスのない地域における住民の足として、なくてはならない公共交通機関です。

 ところが、規制緩和後のタクシーの供給過剰による過当競争は、タクシー運転手の低賃金や長時間労働等による過労運転を助長し、それが交通事故増加などの安全運行を脅かす事態が深刻さを増しています。

 弁護団は、タクシー運転手の労働条件の改善のみならず、個々のタクシー会社のコンプライアンスを促進し、タクシー業界全体が適正かつ活性化することを求めています。

 ※弁護団の活動状況は、ホームページ(http://www.h-taxi-bengodan.org/aboutus.html)でもご覧いただけます。

法律問題Q&A[労働問題編]

今回は、法律事務所に寄せられる様々な相談の中から、労働問題を取り上げ、よくあるいくつかの疑問について、当事務所の弁護士がそれぞれの見解でお答えしております。皆様、参考にしてみてください。

  • セクハラ・パワハラを受けた場合、どうしたらいいでしょうか。
  • セクハラには、環境型(例:職場でしつこく「結婚はまだ」と聞かれる)と、対価型(例:誘いを断ったら解雇や減給)があります。パワハラは、職場での地位を乱用してイジメをしたり、暴言をあびせたりする行為です。
     被害の内容は日記などにメモしておきましょう。会社にはセクハラ相談窓口の設置が義務づけられています。でも、なかなか会社には相談しにくいものですし、会社の対応が期待できないことも多いようです。そのような場合、迷わず当事務所にご相談ください。 (弁護士 三浦桂子)
  • 親の介護のために仕事を休みたいのですが、どうしたらよいですか?
  • 「育児・介護休業法」に、@介護休業とA介護休暇の制度があります。介護休業は、被介護者1 人につき、93 日までまとまった休みがとれるのですが、2 週間前に申し出をしなければなりません。原則として1回限りです。これに対し、介護休暇は、被介護者1 人につき年5 日(被介護者が複数の場合は10 日)必要な時に休むことができ、当日の朝でも申し出可能です。通院の付き添いや手続の代行などスポット的に利用できます。両者ともに有給が義務づけられていませんが、雇用保険法により休業給付金として休業前の収入の40%が支給されます。 (弁護士 内田信也)
  • 会社の経営状態が悪く、数カ月間も賃金を支払ってくれないまま、倒産しました。賃金は払ってもらえないのでしょうか。また、残業もあったのですが、残業代の請求はできますか。請求に必要な資料などについて教えてください。
  • 破産手続等の中で優先的に支払われる場合もありますが、「未払賃金の立替払制度」を利用して、労働者健康福祉機構から対象となる未払賃金(残業代も含みます)の一部を立替払してもらうことができます。ただし、請求するためには、事業主側の要件や、労働者の退職時期、未払賃金額の証明・確認、立替払請求の時期等、いくつか要件があります。また、賃金台帳や給与明細書、出勤簿・タイムカード等の未払賃金額が推認できる客観的な資料が必要になります。 (弁護士 香川志野)
  • 会社から突然解雇を言い渡されましたが、納得できません。解雇はどのような場合にできるのですか。どのように争えばよいですか。
  • 会社はいつでも労働者を解雇できるわけではありません。解雇が出来るのは、客観的に合理的な理由があって、そのために解雇することが社会通念上相当と認められる場合に限られます(労働契約法16 条)。通常は、事前の注意や指導なしに、いきなり解雇することはできません。ただ、解雇と言われて会社に行かなくなってしまうと、合意退職したことにされてしまう恐れがあるので、解雇を言われた翌日も会社にいったんは出社し、就労の意思があることを伝えて下さい。 (弁護士 中島 哲)
  • 工場で機械の誤作動があり、ケガをしました。どのように補償されるのでしょうか。ケガが治らなければ解雇されるのでしょうか
  • この場合は労災保険による保障がなされるので、労働基準監督署で手続を取ることになります。保障の内容は、給料の60%の休業補償、治療費の保障、後遺症に対する保障などがあります。また、事故の原因が事業所の過失によるものであれば、事業主に対し給料の差額分や後遺症の損害などについて、民事上の賠償請求をすることができます。
     また、労災の療養のために働けない期間は、法律の規程で解雇することはできません。 (弁護士 川上 有)

この他にもお困りのことがあれば、いつでもご連絡ください。

いまこそ比例を軸とした選挙制度に抜本的改正を! 弁護士 佐藤 哲之

 いま、国会では選挙制度改革をめぐり「各党協議会」が開かれています。高裁で参議院の定数格差の違憲判決が相次ぐだけでなく、昨年三月に、最高裁で、衆議院の「一票の格差」是正に関し、「一人別枠方式」をも違憲として現行選挙制度の見直しが求められてもいるからです。一年とも言われる周知期間を考えると、衆議院が任期満了を迎え、参議院も半数改選を迎える二〇一三年を目前にして、このままでは、選挙無効の判決も言い渡されかねないため、選挙制度「改正」問題は、待ったなしの状況にあるのです。

 民主、自民両党は、この「格差是正」問題に便乗し、更には「ムダ削減」を口実にして、特に衆議院の比例定数を大幅に削減し、小選挙区制により一層純化しようとしています。しかし、それでは議席数に民意は反映されず、アメリカべったり、大資本本位、国民生活無視の政治は改まるどころか、ますます推し進められることになってしまいます。政治家の質も悪くなり、国民の政治に対する閉塞感もますます強まります。そういうときには大阪の「ハシズム」のような状況も生まれます。極めて危険です。

 今の閉塞状況を正しく打開し、平和で民主的な、そして、国民本位の政治に転換させるためには、民意を正しく反映した国会が不可欠です。そのためには、比例を軸とした選挙制度への抜本的改正が必要です。比例定数削減に反対するだけでなく、選挙制度の抜本的改正と政治を劣化させているもう一つの元凶である政党助成金の廃止を強く要求しましょう。

B型肝炎訴訟新規参加の呼びかけ 弁護士 中島  哲

 当事務所の佐藤哲之弁護士が全国の弁護団長を務める全国B型肝炎訴訟について、二〇一一年六月二八日に全国原告団、弁護団と国との間の基本合意が成立しました。先行訴訟が札幌地裁に提訴された一九八九年から実に二三年かかった基本合意ですが、この基本合意の最も特筆すべきところは、基本合意までに提訴した原告だけを救済するのでなく、原告となっていなかった被害者も含めて、全国約四五万人と言われる幼少期の集団予防接種における注射器の使い回しによるB型肝炎感染被害者が同様に救済される道筋を作ったことにあります。今後は、この基本合意の枠組に沿って提訴するB型肝炎感染被害者については、その病態に応じて五〇万円から三六〇〇万円の賠償金が支払われることになりました。また、今後は、原告団から国や地方自治体に働きかけて、医療費助成や治療体制の確立などの肝炎問題に対する恒久対策についての取り組みも主体的に行っていく予定です。

 ご自身の生年月日が昭和一六年七月以降でB型肝炎に持続感染しており、B型肝炎に感染していない母親か年長の兄姉がいる方であれば誰でも新たな原告となれる可能性があります。お心当たりの方は、弁護団までぜひご連絡下さい(全国B型肝炎訴訟北海道弁護団事務局:電話番号/011-1231-1941、電話受付/月〜金曜日(祝日除く)午後三時から五時)。

武富士の創業者一族に対する責任追及訴訟について 弁護士 渡辺 達生

 二〇一〇年九月、かつてサラ金業界の盟主であった武富士が会社更生法の申し立てをし、事実上倒産したことは皆さんも良くご存じのことと思います。武富士は、みなし弁済の規定を悪用し、違法な高利を取り続けることで莫大な利益を長年あげてきました。武富士はその違法性が社会的に明らかになり、過払い金の請求を広く受けるようになる中で、会社更生法の申し立てを選択しました。この時点での武富士の過払い金債務は、二〇〇万人近い債権者に対し、二兆四〇〇〇億円余りとなっています。

 管財人のもと、資産の調査等が行われましたが、武富士は倒産時の資産は六〇〇億円余りしかありませんでした。管財人が提案した更生計画案は、武富士の事業を韓国のサラ金大手の会社に売却をし、その代金等も原資に加えて三・三%の配当をし、残りの九六・七%は免除するというものです(新聞報道によれば、売却代金の支払いが期日通りになされておらず、この計画案自体が履行されるかも不明確な状況です)。過払い金が二兆四〇〇〇億円あるということは、それに相当する利益が武富士にあったということにほかなりません。その利益は一体何処に行ってしまったのでしょうか?

 また、昨年五月、武富士の創業者である武井一族の間の贈与を巡る税金の裁判で、国から武井一族に対し、誤って徴収した税金二〇〇〇億円余りを返還するとの判決が出されました。この判決からも、武井一族が武富士の違法な利益から莫大な蓄財をしていたことが明らかです。

 この事態が不正義であることは明らかではないでしょうか? このような不正義を黙認することはできず、昨年の夏以降、札幌だけでなく、東京をはじめとする全国各地の裁判所に、取締役として武富士の経営をしていた武井一族の責任を追及する訴訟が提起されました。取締役の責任追及という方法は決してやさしいものではありませんが、北海道でも一〇〇人近い原告が既に立ち上がっています。全国で二〇〇万人という被害者の数からみるとまだまだ少ない数です。武井一族を法廷だけでなく、世論でも追いつめて行くことが勝つためには不可欠です。

武富士に過払い金がありながら、会社更生により踏み倒されてしまった方、是非、この訴訟にご参加ください。皆さんが、武富士の被害者であることも踏まえ、低廉な費用(過払い金額に相当する印紙代相当額+五〇〇〇円、例えば二〇〇万円の過払い金の方は二万円程度)で参加できるようになっています。興味がある方は、当事務所までご連絡ください。詳しいことをご説明いたします。

「命よりも産業優先」 弁護士 長野 順一

『一』

 昨年八月二五日、大阪泉南アスベスト国家賠償訴訟について、大阪高裁は、昨年五月一九日の大阪地裁判決を取り消し、原告らの請求をすべて棄却するという不当な判決を言い渡しました。

『二』

 大阪・泉南地域では、二〇世紀はじめから約一〇〇年間にわたって石綿紡織業(石綿原料と綿を混ぜ合わせて石綿糸や石綿布などの一次加工品を生産)が発展し、最盛期には約二〇〇社の小規模零細の石綿工場が狭い地域に集中立地していました。

 これらの工場では、労働者がアスベストの粉じんがもうもうと舞う中で働いており、そのような労働者の中に、戦前から石綿肺などの健康被害が発生していました。

『三』

 国は、この地域で実施した調査により、戦前から深刻な被害が出ていることを把握していましたし、戦後も医師らによる調査が繰り返され、肺がんを含む被害の進行が報告されていました。

 ところが、国は、このような被害の実態を知りながら、アスベスト粉じんを排出するための局所排気装置の設置などの対策を使用者に義務づけることを長い間怠り、また発がん性を前提にした規制や対策を充分に行わなかったために、この地域では、石綿肺や肺がん、中皮腫など甚大な石綿関連疾患が発生し続けることになりました。

『四』

 このような国の義務違反について、昨年五月一九日、大阪地裁は、じん肺法が制定された昭和三五年には、ばく露防止の中心である局所排気装置の設置を義務づけることが必要で国がそれを義務づけなかったことは違法であり、またそれを義務づけた昭和四七年以降も、測定結果の報告義務づけや改善措置の義務づけを行わなかった点も違法であるとして、国に対して、元労働者の原告らに、損害賠償の支払いを命じる判決を言い渡しました。

『五』

ところが、国は、この判決を不服として控訴し、その控訴審において、大阪高裁は、昨年八月二五日、一審判決をくつがえし、国の責任を免罪する判決を言い渡しました。

この判決の結論が不当であることはもちろんですが、驚くべきはその判決理由に書かれている内容です。判決は次のような不当な判断をしています。

 第一に、判決は、生命や健康、生活環境への「弊害が懸念されるからといって、工業製品の製造、加工等を直ちに禁止したり、あるいは、厳格な許可制の下でなければ操業を認めないというのでは、工業技術の発達及び産業社会の発展を著しく阻害する」、「工業製品の社会的必要性及び工業的有用性」も踏まえるべきであるなどとして国の義務違反を否定した点です。これは、労働者のいのちや健康よりも産業発展、経済発展を優先することを露骨に示したものであり、いのちや健康こそが最も尊重されるべきとしている憲法の精神に真っ向から反するものです。

 同時に、国の規制権限を厳格に捉え、国は医学的知見や科学技術の発展に則して「できるだけ速やかに」「適時、適切に」規制権限を行使すべきとした筑豊じん肺最高裁判決以降の最高裁判決の流れにも真っ向から逆行しています。

 第二に、判決は、泉南地域の石綿紡織業や泉南アスベスト被害の実態に全く目を向けようとせず、国の責任は一片の通達等を出しただけで免罪する一方で、長期にかつ大量に発生した泉南アスベスト被害の全責任を、「コストが高いなどの理由で局所排気装置を設置しなかった」小規模事業主や、「息苦しさや不快感等で防じんマスクを着用しなかった」石綿被害者に押しつけています。

 これは、国の無策で被災した被害者に対して、「それはあなたの自己責任だ」と言っているのと同じであり、あまりのひどい内容に開いた口がふさがりません。

『六』

 このような不当な判断は絶対に許容されません。

 また、筑豊じん肺最高裁判決などの判決の流れからしても、このような不当判決は必ずくつがえされると思います。

 泉南アスベスト訴訟の原告や弁護団はこの不当判決に屈することなく、最高裁判所でこれを覆すために頑張っています。また、全国の弁護士が、この不当判決に対する上告審の闘いをともに闘うために続々と代理人に就任しています。 

 みなさまにもぜひご支援をお願いいたします。

笹森学の書評コーナー

「劇場版神聖かまってちゃん ロックンロールは鳴り止まないっ」(入江悠監督)ポニーキャニオン

◆「友だちを殺してまで。」「みんな死ね」「つまんね」などのアルバムで圧倒的な存在感を発揮する神聖かまってちゃん(以下SKC)。その音楽は自我を攻撃する悪意に対し過剰なまでの自意識をショートさせる。

◆そのコンサートまであと1 週間。マネージャーのツルギはSKCを派手にメジャーデビューさせろと上司から企画を強要される。三十路になったシングルマザーかおりは息子涼太を保育園に預けながら昼は清掃、夜はダンサーとして働く。店からはセクシーなポールダンスをするよう求められ、経済力を持つ元夫から涼太の親権を渡すよう迫られる。涼太はPC を持って登園しSKC のネット配信に夢中だ。園児に悪影響を与えると、かおりは保育園から厳重注意を受ける。閉じ籠もりの兄を持つ女子高生の美知子はプロ棋士を目指しているが、大学に行かないと言って同級生に変人扱いされ父親から激怒される。くすぶりを抱えた4 者は4 様に「自分」を求めてもがき続ける。コンサート当日、弾けたSKC の音楽は彼らの触媒となるか?

◆監督は、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭GP「SR サイタマノラッパー」の入江悠。SKC宣伝映画として企画されながら現在にコミットした力作となった。

◆エンディングの「美ちなる方へ」は万感を去来させて、まさに〈ロックンロールは鳴り止まないっ〉。


弁護士紹介取扱分野Q&A