北海道、札幌を中心とした北海道合同法律事務所が発行する「事務所通信:北の峰」の2010年 夏号をご紹介致します。

 北の峰のご案内

北の峰 2010年夏号


B型肝炎訴訟の和解による早期解決をめざして 弁護士 佐藤 哲之
NTTの不当な人事政策との闘い 弁護士 長野 順一
北海道を米軍が狙っている 弁護士 石田 明義
改正貸金業法 弁護士 安部 真弥
足利事件 - 菅家利和さんに「完全無罪」 弁護士 笹森 学
今、北海道の教育が危ない !!! 弁護士 渡辺 達生
裁判員裁判を経験して 弁護士 川上 有
北海道生存権訴訟解決報告 弁護士 中島  哲
「いじめ自殺訴訟」の新たなる地平 弁護士 内田 信也
司法修習費用の給費制維持について 弁護士 中島  哲
笹森学の書評コーナー  
巻頭言  

残暑お見舞い申し上げます

 ワールドカップでの日本の活躍に国民は沸きましたが、「危機感をバネに結果オーライだったが、日本サッカーの方向性が見えない」という酷評が耳を離れません。  
ひるがえって、サッカーと並行して行われた参議院選挙。民主党が敗北し、共産党・社民党の護憲政党も「小選挙区制」の壁の前に後退しました。日本の政治は、どういう方向に向かうのか、国民のフラストレーションは募るばかりです。  
 ワールドカップを開催したアフリカは、中南米とともに、自立への道を歩み始めました。彼らが引き合いに出すのがヨーロッパです。「冷戦が終わったのだから、もうアメリカに従う必要はない」と、冷戦終了直後から政治統合が始まり、軍縮やNATO 核兵器共有協定からの離脱(二〇〇一年ギリシャ、二〇〇五年トルコ)が加速しています。  
 ところが日本は、日米軍事同盟と核抑止力にしがみつき、米軍と自衛隊の再編強化に進んでいます。消費税増税も、参議院選挙後の報道により、実はアメリカ政府からも要求されていたことが分かりました。  
 いま、一人一人が声を出して世の中を変える覚悟が必要ではないでしょうか。私たち日本国民は、非武装・平和、そして生存権の保障という、すばらしい国の形を定めた憲法を持っています。
 人間らしい生活と、それに奉仕する政治を取り戻すために、力を合せようではありませんか。
 皆様のご健勝をお祈り致します。

2010年 夏 北海道合同法律事務所一同

B型肝炎訴訟の和解による早期解決をめざして 弁護士 佐藤 哲之
(全国B 型肝炎訴訟弁護団代表)

◆裁判所の勧告でようやく和解協議入り!
 本年三月、多くの国民の関心を呼んでいるB 型肝炎訴訟について、札幌地裁と福岡地裁が相次いで正式に和解勧告をしました。  この勧告に対し、政府は、五月一四日、ようやく和解協議入りを表明したものの、和解に臨む方針については、札幌地裁が示した「救済範囲を巡る本件訴訟の各争点については、その救済範囲を広くとらえる方向で判断する」との指針に対する態度表明を拒否し、七月六日まで明らかにできないとの態度に終始しました。

◆国の見解は「解決先送り」「被害者切り捨て」!
 七月六日、和解勧告から四カ月も経っているのに、国は、「和解対象者の合理的な確認方法」に関する見解を示しただけで、「それぞれの病態や症状に応じた救済の方法や内容」に関しては何ら見解を示しませんでした。このような見解を小出しにする国の態度は、早期解決を求める被害者・原告らの願いや国民の期待に反する極めて不誠実なものだと言わなければなりません。

B型肝炎訴訟01 B型肝炎訴訟02

 また、国は和解対象者であるためには、「集団予防接種を受けたことを原則として母子健康手帳で証明せよ」とか、お母さんが亡くなっている場合に母子感染でないことを証明する方法も九九%確実な方法でなければならない」などと主張し、国の責任を全面的に認めた二〇〇六年(平成一八年)最高裁判決があるにも関わらず、過大な証明を被害者・原告に求めています。これでは実に多くの被害者が救済の枠からはずされ、切り捨てられることになってしまいます。

B型肝炎訴訟03

◆一人の被害者の切り捨ても許さず、早期に適正な解決を!
 国は集団予防接種で注射器の使い回しをし、多くのB 型肝炎ウイルス感染被害者を生み出した加害者です。加害者である国は、被害者全員に、与えた被害に応じた責任をとらなければなりません。被害者・原告と同じく感染被害の危険に曝された国民は、このことを理解し、国が不当に被害者を切り捨てようとすることを許さないでしょう。 「最小不幸社会」をめざすと言い、HIV 訴訟のときのことを自分の政治姿勢として強調する菅総理は、国の加害行為による被害の回復を真っ先に行わなければならないはずです。

B 型肝炎訴訟の年内、早期解決のため、みなさんのご理解とご支援をお願いします。(二〇一〇年七月二〇日記)

B型肝炎訴訟05 B型肝炎訴訟04
NTTの不当な人事政策との闘い 弁護士 長野 順一

第一 NTT リストラ北海道訴訟
『一』
 NTT リストラ訴訟は、二〇〇二年五月に行われたNTT の一一万人リストラの違法性を直接問う裁判です。
NTT の一一万人リストラとは、巨大企業NTTが利益の極大化のみを求めて、@五一才になった社員をすべて退職させ、NTTが新たにつくった地域新会社(OS 会社)に三〇%の賃金ダウン(北海道の場合)で再雇用し、A退職に応じない者は、異職種・遠隔地配転を行うというものです。この時に、「退職しない」ために、みせしめとして異職種・遠隔地配転をされた労働者が、全国で裁判に立ち上がりました。

『二』 札幌訴訟については、二〇一〇年六月に最高裁判決が出され、原告五人の内、両親の介護の負担が大きいにもかかわらず、東京に配転になった労働者について一五〇万円の慰謝料を認めた札幌高裁の判決(裁判の途中で退職したため慰謝料のみ請求していました)が確定しました。ワークライフバランスの観点からも介護を理由に配転を否定したこの判決の意義は非常に大きなものです。

第二 NTT 契約社員への派遣化強要

『一』 このリストラ問題が、終結に向かおうとしているまさにそのときに、NTT は、また、違法、不当な人事政策を始めました。
NTT 東日本―北海道では、「契約社員」と呼ばれる従業員が約七〇〇名おりましたが、これら契約社員は、契約書には労働契約の期間の定めが記載されていたものの、多数回にわたって自動的に労働契約が更新され、長年にわたって正社員と同様に、知識や技術を要求される仕事をこなしてきました。
 ところが、昨年一〇月、「雇用形態変更についての説明会」なるものが開催され、契約社員全員について、NTT 北海道テレマート社(以下「テレマート」といいます。)に転籍して、登録型派遣社員となった上で、NTT 東日本―北海道において派遣社員として働くという、「雇用形態の変更」を行うとの説明がなされ、「これに同意しない者については、三月末の契約期間の満了をもって雇い止めする」との、「脅し」がなされました。
 今までより身分の不安定な派遣社員に切り換わる、このような一方的な変更に、納得できるはずもありませんでしたが、同意しなければ雇止めになるとの説明に、多くの契約社員が、やむなく転籍に同意しました。

『二』 そのような中で、一人の契約社員の女性が、勇気を持って立ち上がり、通信産業労働組合(以下「通信労組」といいます。)に加入して、転籍への同意を撤回し、札幌地方裁判所に、期間満了をもって雇止めをしないように求める仮処分を提起しました。そしてこの問題が国会でも取り上げられることとなり、追い詰められたNTT 東日本―北海道は、この女性の雇止めを行わず、労働契約を更新しました。同時に、転籍に同意しなかった、約一〇名程度の他契約社員についても契約を更新しました。

『三』 このことは、「雇い止めする」と言われてやむなく転籍に応じた多くの社員にも、会社の説明の「嘘」と「脅し」を、はっきり認識させることになりました。
 転籍した社員の中から、この転籍を取り消して、NTT 東日本―北海道との直接雇用に戻してほしいとの声があがり、さらに通信労組に加盟する社員が出てきました。その中から、三人の女性が本年六月一一日、NTT 東日本―北海道との直接雇用関係の確認を求める訴訟を札幌地裁に提起しました。

『四』 この三人を含めて、転籍した社員の皆さんは、解雇・雇止めにすることは最初からできなかったのに、会社から「雇止めにすると」言われ、応じなければ実際に雇止めされると考えて転籍に同意したものですから、このような意思表示は錯誤・詐欺・強迫に基づくもので、有効ではなく、NTT 東日本―北海道との間の労働契約は当然に存続していることになります。
登録型派遣は、不安定雇用の最たるものです。NTT 東日本―北海道がその登録型派遣への切換えの手段として、「雇い止め」という「騙し」と、「脅し」の方法を用いたことは決して許されません。
 転籍を強要された全ての契約社員が、元のNTT東日本―北海道との間の雇用契約に戻り、労働の実態に応じて正社員と変わらない処遇がなされるようにこれから、熱い闘いが続きます。

北海道を米軍が狙っている
〜北海道と米軍の関係を知っていますか〜
弁護士 石田 明義

米軍が使用する北海道の基地・演習場

●陸も空も海も米軍の手が
 昨年秋、平和委員会などの平和団体が協力して「北海道の米軍・自衛隊は、今」(発行 安保破棄北海道実行委員会)というブックレットをつくりました。
 北海道には、米軍の専用基地として東千歳に「キャンプ千歳」がありますが、米軍はいません。日米共同使用という方法で自衛隊基地を米軍基地として使用できる協定(二―四―b)の対象になっているのは、全道では一七カ所。平成になってから五カ所増加。基地数では沖縄に次いで二番目、共同使用を含めた面積では沖縄より広く日本一。北海道は米軍にとって演習等の利用価値が高い地域なのです。
 毎年のように日米共同の積雪寒冷地訓練、日米統合演習、指揮所演習などが行われています。
「沖縄の痛み」をわかちあうということで別海町などの矢臼別演習場には沖縄の海兵隊の一五五ミリ榴弾砲の実弾射撃の移転訓練が行われ、今年は六月〜七月に一一回目を行いました。米軍の実弾射撃訓練は、沖縄と「同質同量」の訓練条件は無視され、何の制約もなく米軍が自由に使用しています。今年の矢臼別での演習でも、夜間訓練、小火器使用、白リン弾使用をしました。大量の弾薬や非人道兵器の白リン弾の使用などから七回も火事を発生させて住民の不安と怒りを拡大させています。米軍には天候によって火薬の種類の使用規則があります。一〇日間で七回の火災は異常で、ルールを無視した演習の可能性があります。防衛局は住民の批判の声に耳を傾けて米軍を行動を抑制するのではなく米軍が満足な演習ができるよう支援しているのです。
 また「米軍再編」の一貫として、千歳基地には、嘉手納だけではなく岩国からも米軍機が移転して、日米共同でこれまで三回、飛行訓練を実施しています。
 ミサイル防衛の関係では、奥尻島の西方海上に米イージス艦の監視活動地域(北朝鮮などからミサイル対象)があり、北海道の主要な港には、イージス艦はもちろんのこと、小樽、室蘭には空母も寄港した実績があります。

●米軍と一体化の自衛隊の海外派兵

米軍の白リン弾使用の演習
米軍の白リン弾使用の演習

 このように共同使用などによる自衛隊基地の米軍基地化がすすめられ、米軍の北海道の利用が増えるのは二つ理由があります。
 一つ目は、「米軍再編」にみられるように米国の世界戦略にもとづく「米軍と自衛隊の一本化」(戦争参加できる自衛隊の強化)がされているからです。道内の自衛隊は「国際任務待機部隊」として位置付されています。イラク派兵のほか、最近は帯広の陸自がハイチに派遣されました。二つ目は、米国は海外展開している米軍基地を維持するために同盟国・基地受け入れ国に負担を求め、日本は破格の「思いやり予算」を組んでいます。日本に前進基地を置くのも、日本が財政支援して安上がりな米軍基地を提供しているからです。米軍から見ると自衛隊基地の共同使用は、基地の管理はあくまでも自衛隊なので周辺住民の反感や批判が弱くなります。

●日米合意・ねらわれる北海道と矢臼別 共同使用基地の拡大

訓練の後釧路市内を歩く海兵隊(写真 田中博修)
訓練の後、釧路市内を歩く海兵隊

 五月二八日の普天間問題での日米合意で新たな問題がでてきました。「沖縄の痛み」を分散するという口実で、全国三三〇、道内六六自治体に分散移転の方向を防衛省が自治体に通知しました。基地のあるところや関連地域に負担を押しつけるため、基地の共同使用の拡大をするつもりなのかもしれません。従属的な外交をつづける限り、全国の米軍基地化に向かうのでしょう。とても許されません。また、防衛大綱改正(一二月予定)で、陸自の削減が想定されているため、矢臼別などへの海兵隊分散移転訓練を拡大させようとする政治的な動きもみえかくれしています。
 「沖縄の痛み」を全国に分散するのではなく「痛み」をなくすことです。沖縄にいらないものはどこにもいらないのです。

●安保条約は一年で解消できる

北海道の米軍・自衛隊は今
ブックレット「北海道の米軍・自衛隊は、今」
1 冊400 円 当事務所で販売しております

 今年は安保改定五〇年。「日米同盟の深化」や、戦争するための自衛隊海外派兵ではなく、安保条約一〇条を適用して政府が条約解消の通知をすれば一年で自動的に安保終了します。地域協調、平和外交などを重視した平和環境をつくるべきです。憲法九条をもつ国民として世論を大きくして政府に強く求めていく必要があります。
 沖縄の問題は私たち北海道の問題でもあり、沖縄名護市議選、知事選、今後の普天間問題をめぐる動きに注目していく必要があります。

改正貸金業法(平成二二年六月一八日施行) 弁護士 安部 真弥

改正貸金業法

 貸金業法とは、貸金業者や、貸金業者からの借入について定めている法律で、近年社会問題となっている多重債務問題等を解決するため、今般改正されました。

 改正の主なポイントは、@上限金利の引き下げ、A総量規制、の二つです。

 まず、@上限金利が、これまでの二九・二%から、借入金額に応じて一五%〜二〇%に引き下げられました。
 そして、A総量規制により、個人の借入総額が、原則として年収の三分の一までに制限されました。ただし、除外の貸付(不動産購入のための貸付等)や例外の貸付(緊急医療費等)といった例外があります。 また、クレジットカードでのキャッシングは総量規制の対象となりますが、ショッピングは対象となりません。
 総量規制は、原則として個人ごとの年収を基準としますが、配偶者と併せた年収の三分の一以下の貸付が例外的に許されています(配偶者貸付)。

 なお、現在既に貸金業者からの借入残高が年収の三分の一を越えている場合でも、貸金業者からの新規貸付が受けられなくなるだけで、越える額の返済をただちに求められる訳ではありません。
 しかし、新規貸付が受けられなくなることで、これまで借入で返済や生活費を賄っていた方の中には、返済等に窮する方が出てくるかもしれません。そのような場合は、無理をせず、できる限り早めに弁護士に相談して下さい。

※貸金業者とは、お金を貸す業務を行っており、財務局又は都道府県に登録している業者のことをいい、消費者金融やクレジットカード会社などがこれにあたります。銀行、信金、信組、労働金庫などは貸金業者ではありません。

足利事件 - 菅家利和さんに「完全無罪」 弁護士 笹森 学

『一』 二〇一〇年三月二六日、宇都宮地方裁判所(佐藤正信裁判長)は、足利事件について菅家利和さんに対し「無罪」を言い渡しました。検察官が上訴権を放棄したので無罪判決は即日確定しました。

『二』 宇都宮地裁は、まず当時の科警研のDNA型鑑定について、証人として立った三人の法医学者が鑑定写真を見て一致しているとは言えないと述べたことなどから「現段階においては証拠能力を認めることができないから、これを証拠から排除する」とした上、菅家さんの自白について、再鑑定と矛盾し「菅家氏が本件自白をした最大の要因が捜査官から本件DNA 型鑑定の結果を告げられたことにあると認められ、結果的にこれが菅家氏と犯人を結びつけるものではなかったこと、再審公判において明らかとなった当時の取調べの状況や、強く言われるとなかなか反論できない菅家氏の性格等からすると、むしろ、本件自白の内容は、当時の新聞記事の記憶などから想像をまじえて捜査官などの気に入るように供述したという確定控訴審における菅家氏の供述に信用性が認められる」から「菅家氏の自白は、それ自体として信用性が皆無であり、虚偽であることが明らかである」と言い切りました。

『三』 そして、佐藤裁判長は、「菅家さんの真実の声に十分に耳を傾けられず一七年半の長きにわたり、その自由を奪う結果となりましたことを、この事件の公判審理を担当した裁判官として誠に申し訳なく思います」と述べると同時に、両陪席裁判官と一緒に立ち上がって、「申し訳ありませんでした」と謝罪したのです。

『四』 「菅家さんが無罪であることは誰の目にも明らかになった」と満天下に宣言され、裁判所の謝罪を得て、菅家さんにとっては「完全無罪判決」であったと評価することができます。そして、この無罪判決から何を教訓とするかは私たちに委ねられました。

今、北海道の教育が危ない !!! 弁護士 渡辺 達生

 小林千代美議員の政治資金規正法違反事件において、北教組の役員が逮捕され、有罪となったことは、皆さんもご存じのことと思いますが、自民党系の道議会議員と道教委は、その事件を口実にして、教育に対する不当な支配を強めています。

■ 日の丸・君が代の強制
 道教委は、本年三月一八日、日の丸・君が代を教職員及び子どもたちへ事実上強制する通知をだしました。通知では、「国旗は、出席者の目に触れる場所に自然な形で掲揚すること」とされ、「日の丸」をステージ正面への添付を求めています。
また、通知では、国歌は「式の中で実際に歌唱されるよう指導する」とした上で、「直接子どもの指導に当たる教職員が国歌斉唱時に起立することは社会通念上当然のこと」として、起立しない場合には「校長は、職務命令を発することができる」と、教職員と子どもたちへの強制を辞さないことを強調しています。

■服務規律調査
 道教委は、本年三月三〇日、学校長が、全教職員を対象に個別に面談し、「勤務時間中の組合活動に関する調査」と「教職員の政治的行為に関する調査」等を、詳細な調査項目に基づいて聴き取り(服務規律調査)を行う旨の通知をだしました。しかも、調査については労働組合との交渉には一切応ずる必要がないとする一方、聞き取りを拒否した職員には職務命令を発し、調査を強制することも明言しています。
 この調査では、組合関係の連絡で学校の電話やファックスを使うことまで問題視しています。勤務時間中の組合活動は一切禁止されているわけではありませんし、学校ではPTA 等の学校とは別の組織の関係で電話やファックスを使うことも日常的にあることで、労働組合だけ問題視することの方が問題です。また、教職員も政治的自由があるのであり、それを不当に侵害する調査は許されるものではありません。

■情報提供制度
 道教委は、本年六月一日から、情報提供制度を創設しました。これは、学校の運営や教職員の服務について法令違反等を見つけた道民が、道教委に対してそのことを通報する制度です。本来、学校の運営に関する問題は、生徒・親・教師が学校内で協議して解決するものです。そのような解決方法が、最も教育の本質に即しているのです。それを無視し、道教委が全て上から介入するというのが、この制度の意味するところです。

 このような教育に対する不当な介入に対し、自由法曹団北海道支部や道内の弁護士有志が反対の声明を出したりすると共に、弁護士会も人権侵害の観点からこれらの問題への取り組みを始めています。当事務所も、諸団体と共闘して、教育に対する不当な介入を排除する運動に大きく関わっていきたいと思います。皆さんも、是非、ご支援・ご協力をおねがいします。

青年法律家協会第14 回人権研究交流集会のお知らせ

【●青年法律家協会第14 回人権研究交流集会のお知らせ】
 2010 年9 月25 日(土)〜 26 日(日)にかけて、札幌コンベンションセンターで青年法律家協会の第14 回人権研究交流集会が開催されます。
 人権研究交流集会は、憲法と人権の擁護を掲げる青法協の最も大きなイベントで、2 〜 3 年に1 回、開催されています。
 これまで、札幌で開催されたことは無かったのですが、今回、初めて開催することになりました。
 25 日(土)は午後2 時から5 時まで「企業の社会的責任(CSR)を問い直す〜人権の視点から〜」と題するパネルディスカッションを行います。26 日(日)午前10 時から午後1 時まで分科会を行います。裁判必勝法分科会、平和分科会、刑事司法分科会、外国人研修生分科会、アスベスト分科会、憲法25 条分科会、生物多様性分科会、企業分社化分科会、情報公開分科会、性教育裁判分科会と多様なテーマで多数の分科会を準備しています。各分科会とも市民の皆さんにも、最新の議論状況等を判り易くお伝えしようと準備をしています。
 参加費として500 円をいただくことにはなるのですが、興味のある方は是非、ご参加ください。事務所にご一報いただければ、チラシを送らせていただきますので、お気軽にご連絡ください。

裁判員裁判を経験して 弁護士 川上 有

 少し古い話になるが、昨年一二月中旬に、裁判員裁判の弁護人を務めた。
 もちろん、裁判員裁判には制度的な欠陥が多数あるし、その中には至急改善しなければならないと思われる課題もある。しかし、私たち弁護人が、存在する制度の中で最善の弁護活動を行うというのが基本姿勢でなければならないし、実際に裁判員裁判で裁かれる被告人が目の前にいる以上、この制度の中で何が最善の弁護活動なのかを考えることこそが重要である。裁判員裁判を批判しているだけの存在であってはならないと痛感している。

 さて、事件は、強盗致傷事件であり、二〇代の男性が、金銭に困り果て、郵便局に強盗に入り、女性客の首付近に包丁を突きつけ人質に取り、郵便局から六〇万円を奪って逃走したものの、すぐに逮捕されたというものである。傷害は、人質に取られた女性が、指を脱臼するなどした約二週間のケガ。被告人は、全面的に罪を認めた。
 私は何度も接見を行った。そして、犯行当時、被告人が金銭に困窮していた事実、それが直接の引き金になって本件を犯したことははっきりしていた。しかし、これまで前科・前歴が皆無の被告人、どう見ても気弱な性格で、家族や知人なども口をそろえて、あの彼がよりによってあのような凶悪犯罪を犯すとはと驚くように、被告人がなぜいきなり郵便局強盗なのかがなかなか分からなかった。

裁判員裁判 直接的な原因ではなく、本当の原因(彼にそう判断させた原因)が分からなければ情状弁護はできない。従来から、私はこういう考えで自白事件の弁護活動をしてきたが、時間的制約から、なかなか法廷で私のものの見方を伝えることができないことに不満を持っていた。通常事件は、一時間の枠の制約があり、検察官立証の時間などを考えると弁護人の持ち時間は、多く見て三〇分程度でしかないからである。

 裁判員裁判では、この点、少なく見積もっても弁護人の持ち時間は、四時間以上ある。私は、ぎりぎりまで被告人と向き合い、私と相弁護人は、彼がなぜ本件を犯したのかについて、私たちなりの理解をし、法廷に臨んだ。
 冒頭陳述二〇分、被告人質問は、二度に分けて合計約二時間、祖父と友人をそれぞれ約三〇分ずつの証人尋問を行い、弁論(四〇分)で結審した。

 裁判員も、初めて経験する刑事裁判で、被告人の真の原因を探ろうと私の話にも十分に耳を傾けてくれたし、被告人に対する質問も真剣そのものであった。検察官・弁護人のそれぞれの立場からの問題提起を率直に受け止めてくれたと感じた。
 結果は、求刑八年に対し六年の実刑であって、私たちが求めた情状酌量(法定刑よりも刑期を減らすこと)はしてもらえなかった。しかし、被告人は大変満足しており、むしろ、裁判が終了した後の接見の際、「私などのためにあれほど多くの人が一生懸命考えてくださって、本当に申し訳ない気持ちです。」と彼らしい感謝の仕方をした。

 制度としては工夫のしがいのある制度であること、磨くべき技術も実感できたし、いままでの刑事弁護が如何に不十分であったかを思い知らされもした。また、機会があったら(そして必ず機会はあるでしょう)、前回以上によい裁判がしたいものだと感じた。

北海道生存権訴訟解決報告 弁護士 中島  哲

北海道生存権訴訟

 当事務所の弁護士が中心となって取り組んできた北海道生存権訴訟(生活保護母子加算削減廃止取消訴訟)について、昨年一二月に生活保護母子加算制度が復活したことは前号でご報告いたしましたが、その後、また新たな展開がありました。

 今年の四一日に、国と原告団弁護団との間で、「母子加算については、今後十分な調査を経ることなく、あるいは合理的な根拠もないままに廃止しないことを約束する。」とする基本合意書を締結したのです。これにより、将来に向けての安易な母子加算廃止をしないことを国に約束させて、翌二日、北海道生存権訴訟は訴えの取り下げにより終了しました。

 北海道生存権訴訟は終了しましたが、全国的には生活保護受給高齢者に対する老齢加算の廃止の取消を求める老齢加算訴訟が続いております。今年の六月一四日には福岡高裁で原告全面勝訴判決が出され、これから最高裁での勝負がはじまります。

 母子加算訴訟が国の約束を取り付ける形で解決することが出来たのは、北の峰読者の皆さまをはじめとする国民全体が母子家庭の生活実態や子どもの貧困の問題について理解し、支援して下さったからです。皆さまにおかれましては、今後は老齢加算訴訟へも、ご理解ご支援の程、よろしくお願い申し上げます。

「いじめ自殺訴訟」の新たなる地平 弁護士 内田 信也

●二〇〇五年九月九日朝、北海道滝川市の小学校に通う松木友音さん(当時一二歳)がいじめを苦に教室で自殺を図り、
〇六年一月六日に亡くなりました。教壇にはいじめの加害者である同級生とこれまで育ててくれた母親と大伯父に対する七通の遺書が残されていました。その遺書を読めば、自殺の原因がクラスメートによるいじめであることは誰の目にも明らかでした。しかし、学校も教育委員会も自殺の原因がいじめであることを認めません。それだけでなく、いじめの実態を隠ぺいしようとしたのです。これに対し、遺族は地道な調査を重ね、徹底して担任と学校の責任を追及し、二〇〇八年一二月一九日に札幌地方裁判所に損害賠償請求訴訟を提起したのでした。以来、三年に渡る審理を経て二〇一〇年三月二六日に和解が成立したのですが、その内容は、現在の日本の裁判所ではこれ以上の和解はあり得ない、と断言できるほど高度な勝利的和解でした。

●本件和解の特徴は、ほとんど判決と変わらない事実認定をしていることです。
まず最初に「和解の前提となる裁判所の判断」という項目があって、それを前提にして和解条項が作られています。
この前提事実は、単なる当事者の合意ではありません。判決になったとしたら裁判所が証拠によって認定した事実です。
そこでは、
 @友音さんがいじめを受け、それを苦にして自殺したこと
 A担当教諭らが注意深く観察していれば、自殺の結果は予見することができたこと
 B担当教諭らが友音さんの訴えに注意深く耳を傾けたり、
  同級生に対してより適切な指導をしたりすれば自殺を防ぐことは可能であったこと
 C事後における教育委員会は、遺書の存在を知りながら、敢えて
  『自殺の原因はまだ特定できていない』との説明を繰り返して遺族に精神的苦痛を与えたこと
が認められました。本件で最大の争点であった「自殺の予見可能性」と事後対応の違法性が認められたわけです。

●そして、和解条項では、解決金の支払いと遺族への謝罪に加え、
 (1)本件と同種事件発生の場合における第三者による調査および被害者の意見を聴く機会の保障
 (2)北海道教育委員会から道内の教師に対する再発防止のための和解調書の周知徹底
 (3)滝川市の「広報たきかわ」への和解の骨子の掲載
が明示されました。これは、特筆すべきもので、今後、同種事件における和解の場合に参考になると思われます。
因みに、(2)の「和解調書の周知徹底」に際しては、遺族のメッセージが添付されます。

●本件以後も、いじめ自殺が続いていることに心が痛みます。いじめ自殺を防止することは勿論のことですが、万一防ぎきれなかった場合、その原因をきちんと調査して再発防止につなげるために「公正な第三者機関」の設置がどうしても必要です。
学校・教育委員会の事後対応の悪さは、遺族を二重・三重に苦しめます。最愛の子を失った上にいじめの存在そのものを否定されることは、「あなたの子どもは勝手に死んだんだ」と言われているのと同じなのです。学校にいじめがあるのは今や常識です。遺族に苦労をかけさせることはあってはなりません。真相解明は、学校にとっても遺族にとっても必要なことです。
その意味で、本件での和解が、今後、真相究明のための「公正な第三者機関」の設置を制度化していく第一歩になることを念願します。

司法修習費用の給費制維持について 弁護士 中島  哲

司法修習費用の給費制維持

 皆さまは、「司法修習生」というものをご存じでしょうか。司法試験に合格した人は、弁護士や裁判官、検察官になる前に一年間の研修を受けなければならず、その研修生のことを「司法修習生」といいます。

 これまで、司法修習生は国家公務員に準じて国から月二〇万円程度の給料が支払われておりました。これを司法修習費用の「給費制」といいます。ところが、今年の一一月からこれが廃止され、司法修習生にはこの給料分の金額が貸し付けられることになろうとしています(貸与制)。司法修習生はアルバイトが禁止されてますので、これを借りるか、自分や家族の貯金で生活するしかなくなります。

 苦労して勉強して何とか司法試験に合格しても、法律家として「ゼロからのスタート」どころか「マイナスからのスタート」になってしまう、これでは裕福な家庭に生まれた人しか法律家になれず、優秀な人材が、親が裕福でないというだけで、法律家をあきらめることになってしまいます。これは、若者の将来を閉ざすだけでなく、国民全体の損失です。

 また、日本国憲法は、立法・行政・司法の三権分立を定めており、法律家はこの三権の一翼である司法権を担う存在です。日本という国家のシステム上、法律家の存在は不可欠であり、国として法律家の卵に研修を受けさせ、これを育てる義務があるのです。民間であれば、研修期間中の給料を支払わない会社など考えられません。

 まして、司法権は、三権の中でも、国家権力に押し潰されがちな国民一人一人の自由や人権を守るために存在しているのです。国が司法修習生の給料を出さないということは、日本という国は、国家として国民の自由や人権の守り手を育てるつもりがないということにすらなります。
 皆さまご自身の自由と人権を守るためにも、ぜひ司法修習費用の給費制維持のための署名にご協力を頂きますよう、よろしくお願い申し上げます。

弁護士 笹森学の書評コーナー
 

BOX 袴田事件 ― 命とは(高橋伴明監督)

BOX 袴田事件 ― 命とは

◆ 一九六六年六月未明、静岡県清水市で放火された味噌工場から四人の刺殺焼死体が発見された。消火活動で右手を負傷し従業員の中で縁戚関係にない「遠州者」として警察に狙われた日本ランカーの元ボクサー袴田巌さんは連日十数時間に及ぶ拷問的取調べを受け、一九日後に遂に自白。住居侵入・強盗殺人・現住建造物放火で起訴され、静岡地裁で死刑判決を受ける(後に最高裁で確定)。日弁連が再審を支援している袴田事件。

◆ 六七年八月に味噌樽から血染めの「五点の衣類」を発見、パジャマを着て犯行を及んだとする自白は覆され、自白調書四五通中四四通は証拠排除されるも死刑。控訴審で袴田さんは五点の衣類を着用できなかったが死刑は維持。

◆ 二〇〇七年、守秘義務を破り、二対一で敗れ死刑判決を書かざるを得なかった苦悩を告白した裁判官熊本典道氏をモデルに、人が人を裁くことの重さを告発した骨太の社会派ドラマである。

◆ 監督は「TATOO刺青あり」「愛の新世界」「光の雨」などの秀作を放つ高橋伴明。多数決で死刑判決を下すことを容認する裁判員裁判は反対と述べる。袴田(新井浩文)が歩んだリング、取調室、独房、迫る絞首台、熊本(萩原聖人)が歩んだ裁判官室での評議、守秘義務を負った心の闇。幾つものBOX が交錯する。我々はそれを凝視する責任がある。

◆ 心を病む袴田氏は、姉を保佐人として第二次再審請求中。


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