北海道、札幌を中心とした北海道合同法律事務所が発行する「事務所通信:北の峰」の2008年 夏号をご紹介致します。

 北の峰のご案内

巻頭言  


 憲法に基づく「法の支配」が問われた上半期でした。
 四月一七日、名古屋高裁は、自衛隊がイラクで武装米兵や物資を空輸しているのは憲法九条一項に反するという画期的な判決を下し、確定しました。自衛隊の活動に関しては、長沼ナイキ基地訴訟・札幌地裁判決以来、三五年ぶりの違憲判決でした。
 ところが、政府は「傍論」の判断だから拘束力がないと言い、田母神空幕長に至っては「関係ない」と言い放ちました。これが法治国家の公務員の発言でしょうか。
 かつて、生活保護基準が余りに低く「健康で文化的な最低限度の生活」を保障した憲法二五条に違反すると争った憲法訴訟がありました。朝日訴訟と言い、一審で違憲判決が出ていました。この裁判で最高裁は、原告死亡により訴訟は終了したとしながら、国の生活保護基準は憲法二五条に違反するものではないと判示しました。これこそ「傍論」判断の極めつけでしたが、政府は最高裁から合憲のお墨付きをもらったと宣伝しました。
 司法判断が出た場合、それに従うのが「三権分立」「法の支配」の原則です。この国の政治家・官僚たちの、法(特に憲法)の無視、ご都合主義には目を覆いたくなります。
 私たち法律家、法律事務所の果たす役割を自覚する毎日です。皆さんもご自愛下さい。

2008年 8月 北海道合同法律事務所一同

日本はイラクで戦争をしている 弁護士 佐藤 博文

 二〇〇八年四月一七日、名古屋高等裁判所は、市民三二〇〇名が自衛隊のイラク派兵差止めを求めた裁判で、画期的な違憲判決を下しました。
 判決は、航空自衛隊が輸送活動を行っているバグダッドは、イラク特措法(イラクに自衛隊を派遣するための法律)が禁じている「戦闘地域」にあたり、そこに米兵などを輸送することは米軍と一体となった「武力行使」にあたり、同法及び憲法九条一項が禁ずる「武力による威嚇又は武力の行使」に当たるという内容です。
 この前提として、米英によるイラク戦争がいかに凄惨で、いかに多くのイラク市民が犠牲になっているか、というリアリティとヒューマニティあふれる裁判官の認識が示されています。

◆ 平和のうちに生きる権利
 判決は、原告となった市民の平和に生きる権利(平和的生存権)について、戦争の被害者にならないだけでなく加害者にもならないとする内容を認め、「全ての基本的人権の基礎にあってその享有を可能ならしめる基底的権利」であって「単に憲法の基本的精神や理念を表明したに止まるものではない」として、具体的権利を真正面から認めました。
 平和的生存権は、人権史的に言えば、第一世代の人権(近代市民革命によって確立した自由権)、第二世代の人権(第一次、第二次世界大戦を通じて世界に普及確立した社会権)に対し、「第三世代の人権」と言われ、環境権などとともに、国家の枠を超えた人権、人権の中の人権と言われるものです。

イラク派兵は憲法違反

◆世界で最も徹底した平和主義
 第二次大戦のヒットラーは、当時、自由権から社会権に至るまで最も豊富な人権保障規定を持っていたワイマール憲法を内部から破壊して、あの悲惨な結果を招きました。戦争の前には自由権も社会権も皆無くなる、だから平和こそ、全ての権利を享受する大前提である、という法思想が生まれました。天皇政府が日本国民とアジア諸国民に与えた惨害も同じです。このことを憲法に最も明確に取り入れたのが日本国憲法の前文と九条でした。
 しかも、本判決は、戦争の被害者だけでなく加害者にもならないこと、さらには戦争に向けた国家の準備行為をさせないことも平和的生存権の内容をなすとしており、「平和主義」に関する世界最高の到達点だと言ってもよいでしょう。

◆敗訴なのに、「歴史的判決」とは如何に
 判決の結論自体は、政府による憲法違反行為はあったものの、原告一人ひとりに慰謝料の支払いを認めるまでの「法益侵害」があったとは認められず、請求は棄却するというものでした。要するに、中身で勝って結論で負けたのです。しかし、日本ではこういう判決は過去にも少なくなく、国の重大な違憲・違法行為を抑制するうえで大きな役割を果たしてきました。
 裁判所は、まず国の行為の事実認定を行い、次にそれが合法か否かの法的判断をし、そしてその違法行為によって損害が発生したか否かを判断したもので、論理的な判断過程を踏んだだけです。とはいえ、現在の日本の裁判官にこのような判断をさせることは実は容易でなく、ここに、今回の判決が画期的とか歴史的とか言われる理由があります。それは、日本の裁判所には「司法消極主義」「憲法判断回避のルール」といい、司法権の責任を自ら放棄し、行政権や立法権(政府や議会)におもねる悪しき性向が根深くあるからなのです。
 そういう意味では、今回の違憲判決は、良心的な裁判官に対する大きな励ましにもなりました。

◆「そんなの関係ねえ」と幕僚長
 ところが政府は、この判決に対し、結論は国の勝訴であり違憲・違法の指摘は傍論にすぎないとか、国が上告できないのはおかしい等と述べ、無視しようとし、あまつさえ、田母神俊雄航空幕僚長は、記者会見で、隊員に与える影響を問われて「そんなの関係ねえ」と言い放ちました。
 しかし、政府は「どこが戦闘地域か非戦闘地域かなど、私にわかるわけがない」「自衛隊が活動するところが非戦闘地域だ」(小泉首相)などと、国民の疑問に答えず、愚弄する態度をとり続けてきたのであって、名古屋をはじめ全国一一裁判所の同じ訴訟において、事実の認否も反論も一切しなかったのです。名古屋判決が「政府の情報不開示と政府答弁」という項目をわざわざ起こし、国の情報不開示、隠蔽(いんぺい)体質を痛烈に批判したことは、国側の余りに無責任、国民無視の態度に我慢ならなかったからです。政府の態度には、呆れるばかりです。

◆政府と国会が果たすべきこと
 日本国憲法九九条は、国政に携わる者の憲法尊重擁護義務を定めています。名古屋高裁の裁判官はその職責を果たしました。司法府の法的判断を受けて、今度は、政府と国会がその職責を果たさなければなりません。本判決に基づいて、すみやかに次の措置をとるべきです。
@ 現在行っているイラクへの自衛隊派遣を直ちに中止し撤退すること
A イラクで自衛隊が行った活動をすべて国民に開示し、検証すること
B 医療支援、教育・技術支援、インフラ整備など、憲法の平和主義に基づく本来の人道復興支援に直ちに取り組むこと
C 現在検討しているアフガニスタンへの派兵は止め、派兵恒久法も断念すること

国民の意思と行動

◆最後に決めるのは国民の意思と行動
 私たち国民の責任は重大です。憲法九条がありながら今この瞬間にも侵略戦争に加担している、その戦禍にあえぐイラクの人々がたくさんいる、私たちは侵略国の国民としてどう責任をとるか、名古屋高裁判決が国民に突きつけた課題に、今度は私たち国民が答える番となったのです。
 北海道では、元自民党代議士だった箕輪登さんが全国で最初に提起した、名古屋と同じ訴訟が札幌高裁に係属し、名古屋に続けと頑張っています。
 憲法九条は生きているのです。自衛隊を海外から完全撤退させるために皆で頑張りましょう。

「B型肝炎・C型肝炎」 弁護士 中島 哲

B型肝炎・C型肝炎  昨年末から今年前半にかけては、肝炎被害者を取り巻く情勢に大きな動きがありました。まず、薬害C型肝炎全国原告団・弁護団の運動が、昨年末に大きく世論を動かし、年明けにいわゆる薬害肝炎被害者救済法が立法化されました。
 しかし、この救済法制定で全てが解決したわけではありません。救済法ではカルテ等の資料が残っている被害者にしか給付金が支給されませんので、被害者全員の救済のためには、肝炎治療体制等の恒久対策を目指した更なるたたかいが必要です。
 他方、幼児期の集団予防接種によるB型肝炎被害者によるB型肝炎訴訟については、最高裁で勝訴したにもかかわらず、国は未だ抜本的な対策をとろうとしません。
 このような国の態度に対し、再度国の責任を問うべく、今年三月に札幌で新たにB型肝炎訴訟を提起しました。この動きは全国に広まり、五月末には全国で第二次提訴がなされました。
 救済法を梃子にした薬害C型肝炎訴訟のたたかい、新たな全国提訴を始めたB型肝炎訴訟のたたかい、いずれも原告が賠償金をもらって終わり、というものではなく、広くウイルス性肝炎患者の救済を求める大きなたたかいの一環と位置づけるべきものです。今後とも幅広い御支持と御支援をよろしくお願いいたします。

生存権訴訟レポート 弁護士 安部 真弥

 北海道生存権訴訟は、現在、第三回目の口頭弁論期日を終えたところです(平成二〇年七月二三日現在)。第二回期日において、被告である札幌市・小樽市は、生活保護の不利益変更には正当な理由が必要であるとしながらも、母子加算削減は、広範な裁量を有する厚生労働大臣の告示に基づくものであり、正当な理由があるとして、その責任を全て国に押しつける主張をしています。このことから、まずは被告を裁量論に逃げ込ませないことが必要となってきます。
 しかし、被告の裁量論への逃亡を阻止するだけでは足りません。というのも、平成二〇年六月二六日に東京地裁で下された老齢加算廃止訴訟の判決は、原告らの窮状を理解することなく、老齢加算廃止には違法はないとしているからです。したがって、いかに原告らがぎりぎりの生活をしているか、貧困の実態とはどのようなものかを、裁判所に理解してもらうための具体的事実の主張・立証も必要となってきます。
 私達弁護団にとって、本件訴訟は乗り越えなければならないハードルがいくつもある困難なものです。しかし、決して最後まで諦めず闘っていく所存ですので、皆様のますますのご支援よろしくお願い致します。

東京地裁判決
組合員参加型団体交渉にお墨付き
弁護士 三浦 桂子

●二〇〇八年三月二六日、東京地方裁判所は、函館中央病院において一九六七年の組合結成当初から行われてきた組合員参加型団体交渉が「労使慣行となっていた」として、「義務的団体交渉事項(賃金などの労働条件に関することを広く含みます)について組合員参加型団交を拒否することは不当労働行為」にあたるという画期的な判断を示しました。

●函館中央病院では、賃上げなどの切実な問題について、組合員だれもが参加できる団体交渉(=組合員参加型団体交渉)を行ってきました。組合員六〇〇名のうち通常一〇〇名前後が団交に参加します。交渉担当は組合執行部が行い、組合員が意見を述べたいときは執行部の許可を得るので混乱もなく、病院側から異議が出たこともありませんでした。
 ところが、二〇〇二年度以降、 病院側が人事考課制度の導入を図って定期昇給を拒否したことをきっかけに労使紛争となり、二〇〇三年一二月、病院は一方的に@団体交渉の人数を一五名に制限する、A定期昇給に関する協定の解約、B年一回四月の定期昇給を定めていた就業規則を改定することを通知し、組合が申し入れた団交に対して組合員参加型団体交渉には一切応じないと拒否したのです。
 病院の狙いは明白です。定期昇給をやめて人事考課制度を導入するためには、組合員参加型団体交渉がじゃまだったのです。

●判決の意義
 何かといえば効率が優先されがちな今日、一〇〇名規模の団体交渉の正当性を明確に認めた画期的な判決です。これを引き出したのは、長年にわたって一人一人の組合員が疲れた身体を励まし団体交渉に参加し続けた団結の成果です。
 病院側もこの判決を受け入れ、五月九日、団体交渉の場で謝罪文を読み上げ組合に手渡しました。四年半の闘いを通じて勝ち取った成果は、組合の更なる団結の糧となることと信じます。

「国際平和協力」の名で
 九条改憲ねらう自衛隊海外派兵恒久法
弁護士 石田 明義

 近未来のある日、自衛隊がある破綻国家へ派兵された。
 そこで、自衛隊は米軍基地を警護し、米軍部隊の援護に駆けつけて銃撃。自衛隊が銃を携えて民家内を捜索し不審者がいたので銃撃。民衆デモに向かって銃をむけ、銃撃した。正当防衛でもないのに、自衛隊の任務妨害を排除するため住民を銃撃。海上では自衛隊が不審船を強制停止させるために銃撃。相手とお互いに銃撃しあい戦争状態になった。自衛隊の近未来の姿。悪夢です。


07.10〜11月米国で米陸軍と共同演習する第5旅団(帯広)HPから
07.10〜11月米国で米陸軍と共同演習する第5旅団(帯広)HPから

■世論調査では、憲法九条擁護派が改憲賛成派を一五年ぶりに上回り、昨年五月に成立した国民投票法もねじれ国会では前へなかなか進まない。自民党はこれを打開するために、前から構想のある自衛隊海外派兵恒久法を成立させ、本命の九条改憲を実質的にすすめようとしています。イラクだ、アフガンだ、期限もつけられ活動内容も制約される特別立法では、制約が多すぎて面倒なのです。

■自民党が準備しているモデルの石破案では@政府の判断だけでも、いつでも、どこでも、いつまでも、自衛隊を海外派兵できるA国際紛争でなければ、危ない地域でも、危ない任務でも自衛隊の任務にするB自衛隊員は正当防衛以外でも武器使用の機会を拡大する、などを想定しています。自衛隊海外派兵自由化法です。とても憲法九条のある国の法律とは思えません。この法律は「国際平和協力」法と人にやさしそうですが、実は「戦争・殺人許可法」で「平和協力」は「偽装」です。

■名古屋高裁のイラク派兵違憲判決で確認されたように、米軍と自衛隊が一体になって武器弾薬、武装米軍兵士など輸送し、米軍の戦闘行為を支援しています。これでも米軍は不満で、もっと軍事支援を拡大し、もっと速やかに要求に応えるように日本に求めています。そのため写真のような日米一体化した訓練が増加しています。また、憲法九条を改正したいが、それも見通しが立たないので、法律で解決しようとするのが自衛隊海外派兵恒久法の狙いなのです。

■米国と財界の強い要求があり、昨年一一月に小沢さんと福田さんが大連立までして制定させることで意見が一致しました。ですから衆参逆転でも安心できません。法案が上程されてからでは遅く、国会に上程させないことが重要なのです。

■法案の学習会では、参加者は「そこまでひどいのか」と驚きます。自衛隊員ですら反対する内容です。イラクへの空自派兵すら違憲でした。それ以上に危険な軍事活動であり、一層明白に違憲行為です。

■この法律の成立を阻止することは、憲法九条改憲の野望を断念させることに直結します。憲法九条を武器に逆襲のとき、闘いどきです。

 当事務所では「自衛隊海外派兵恒久法」「イラク派兵違憲判決」などの学習会の講師に応じています
(問い合わせ011-231-1888)。

各種パンフ

裁判員裁判の本質的な問題点とは? 弁護士 笹森 学
  • 最近、いくつかの弁護士会で裁判員裁判が時期尚早などの決議がなされていますし、参加に消極的な国民が多いと聞きます。裁判員制度の本質的な問題点とはどんなことですか?
  • 直接民主制に準じて裁判に一般市民を参加させると刑事裁判が何か良くなるか?という点です。刑事裁判制度は今まで、それだけを見れば、箸にも棒にもかからないひどいものだったという訳ではありませんでした。司法制度改革は、もともと、基本的には経済界の要求により、民事裁判が時間と金がかかり過ぎるということで始められたものです。その考え方を刑事裁判にも及ぼし、時間がかかりすぎている、国民の処罰感情から国民の意識と乖離した結論が出されているのではないかとして、改革されたものです。ですから、「一般市民を参加させると今より何が良くなるか?」という点について法曹界には本当は確固とした自信があるわけではないと思うのです。だからこそ、一般市民の興味も低調だと思うのです。現在では、名古屋や新潟などの弁護士会で「裁判員制度裁判時期尚早」という決議が出されているほどです。
  • では、結局どうなるのでしょうか?
  • 刑事裁判に一般市民を参加させると、市民の目線に立った結論が出され、良い結果をもたらすとする考え方と、一般市民はワイドショーに近いのだからもの凄いヒステリックな結論になると危惧する考え方に分かれています。私は後者の危惧を持っています。なぜなら、裁判所は三権分立制度のもと、理の機関、静の機関、冷静な機関、少数者保護の機関(多数決で決めた法律を違憲として良識という理屈で無効にできるから)と理解されていますが、市民参加=直接民主制に近くすると大衆の興奮がそのまま反映されて、熱狂的機関となる危険があるからです。そうなると、事実認定は大雑把となり、量刑は厳罰主義となって行くかも知れません。秋葉原事件の加藤被疑者などは事実上裁判なしで結論を出されるようなものだと思います。
  • それは何かまずいような気がしますね。どのような対策がありますか?
  • そうでなくするには、その点をきちんと議論して宣伝、広報することです。今の法曹界の宣伝は、そんなに負担にならないのでどしどし参加して下さい、というもので、これは方向として間違っています。そのために(市民を拘束しないために)証拠は簡単に、手続は簡略に、迅速に、の一辺倒です。この結果は、大雑把な事実認定、重罰の増加となり、誤判の危険がますます高まると思うのです。このような点が考えるべきことです。きちんとした広報と国民の自覚に尽きると思います。以上

裁判員制度とは?

私たち国民が裁判に参加する制度です。
裁判員制度とは、刑事裁判に、国民のみなさんから選ばれた裁判員が参加する制度です。裁判員は、刑事裁判の審理に出席して証拠を見聞きし、裁判官と対等に議論して、被告人が有罪か無罪か(被告人が犯罪を行ったことにつき「合理的な疑問を残さない程度の証明」がなされたかどうか)を判断します。「合理的な疑問」とは、みなさんの良識に基づく疑問です。良識に照らして、少しでも疑問が残るときは無罪、疑問の余地はないと確信したときは有罪と判断することになります。有罪の場合には、さらに、法律に定められた範囲内で、どのような刑罰を宣告するかを決めます。裁判員制度の対象となるのは、殺人罪、強盗致死傷罪、傷害致死罪、現住建造物等放火罪、身代金目的誘拐罪などの重大な犯罪の疑いで起訴された事件です。原則として、裁判員6 名と裁判官3 人が、ひとつの事件を担当します。

裁判員に選ばれたら…?

裁判員に選ばれたら…?

弁護士 笹森学の書評コーナー
 

「うた魂♪」 田中誠監督

「うた魂♪」 ◆ 北海道の中学・高校の合唱や吹奏楽は全国でもいい位置にいる。娘が合唱部なので毎度のようにNコンなどに足を運んだ。通常最後に大会参加者全員で歌う全体合唱というものがあるが、なかなか感動ものである。合唱は、元気のないのも困るが、誰かが突出しても全体のバランスやチューニングが狂うので難しい。〇四年の函館港イルミナシオン映画祭でシナリオ大賞を受賞した栗原裕光さんの「あたしが産卵する日」を映画化した「うた魂♪」は函館を舞台にした(ロケ地はちょっと違うが)合唱部の女の子の成長譚である。函館の七浜高校合唱部のソプラノのリーダー、自意識過剰のかすみ(夏帆)は自分の歌とルックスに自信を持っていたが、歌っているときの写真を見て、口を大きく開けた顔を「産卵中のサケみたい」と言われ、すっかり自信を失う。顧問(薬師丸ひろ子)に退部を申し出るが、受け流される。しぶしぶ出場した夏の合唱祭で、番長(ゴリ)が率いる湯ノ川高校の合唱団のソウルフルな歌声に感激し(「15の夜」)、番長に相談。「必死になっている顔に疑問を持っていたら一生ダセえまんまだ。フルチンになれ」と激励され、合唱の地区予選に挑む……という自我に目覚めるかすみの青春讃歌。楽曲提供のゴスペラーズも出演。最後に歌われる合唱用にアレンジされた「あなたへ」(MONGOL800 )がかすみの気持ちを鮮やかに代弁して印象的。


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