北海道、札幌を中心とした北海道合同法律事務所が発行する「事務所通信:北の峰」の2006年 新春号をご紹介致します。

 北の峰のご案内

巻頭言  


7・29 参議院選挙の示したもの
7月29日、今年最大の政治戦である参議院選挙の投開票が行われました。結果は、自・公与党の歴史的惨敗(改選76が46)、民主の大勝(改選32が60)、そして、護憲政党である共産(改選5が3)、社民(改選3が2)の後退ということでした。
ところで、みなさんはこの選挙に何を託したのでしょうか。
今回の選挙で「消えた年金」や「政治とカネ」に対する国民の怒りが結果に大きく影響したことは間違いありません。しかし、この国民の怒りは一時的、表面的なものなどではなく、安倍首相の「美しい国」とは極端な格差と貧困、地方の切り捨て、アメリカ追随の「戦争する国」に他ならないことを喝破しつつ、それに対して「NO!」を突きつけたものなのではないでしょうか。その意味で、国民の一人一人にこの国の進路をめぐる構造的な対抗軸が明らかになりつつあると言えます。
選挙の結果、総体として改憲勢力が数を増したという点に懸念がない訳ではありません。しかし、自・公に対する批判票を取り込んで大勝した民主党は、そのことの故に、解散・総選挙を求めて自・公に対する批判を一層強めざるを得ないことになります。物事は一直線には進まず、複雑な様相を呈することになるでしょう。
問題は、その中で、国民の側に立ってその対抗軸を一層明らかにし、判りやすい旗印を掲げた受け皿をどう作るかです。
私たちは、これからも、日々の人権擁護活動を通して、その運動の一翼を担う決意です。
2007年 盛夏 北海道合同法律事務所一同

空自女性自衛官の人権訴訟
私の20歳を返して!!
弁護士 佐藤 博文
弁護士 三浦 桂子
弁護士 加藤 丈晴

一、 北海道内にある航空自衛隊通信基地の女性自衛官(21歳)が、上司に強姦まがいの行為をされ、しかも部隊は加害者と被害者を逆転させ、被害者である彼女を邪魔者扱いしていじめ、さらには退職強要まで行ったとして、慰謝料1000万円と退職前提に年休消化させられた賃金相当額について、去る5月8日、札幌地裁に国家賠償請求訴訟を提起した。
お父さんが、彼女に弁護士を紹介しようと、東京の法律事務所に相談したところ、自衛隊イラク派兵差止北海道訴訟(箕輪訴訟)を担当し、「自衛隊員・家族110番」を実施していた当事務所を紹介したという経緯だった。

二、 この裁判は、旧日本軍を承継した自衛隊の知られざる職場実態、その中での女性自衛官への日常的な人権侵害、自衛隊幹部の反人権思想を告発するものである。
自衛隊という厳格な上命下服社会、それについて公私の区別もない(「服務指導」で私生活まで指揮命令関係にある)、男性社会(彼女の所属基地は約180名中、女子は5名のみで、彼女が最年長)、家族・地域から隔絶した「密室」の中で、人間として女性としての人権がいかに無視され、侵害されているか。庁舎3階が宿舎とされ女性5人が相部屋生活、彼女は2階が仕事場、1階が食堂。同じ庁舎の1階と地階で仕事をする加害者を事件後9ヶ月にわたって移動させることなく、毎日顔を合せるような状態を放置し、改善を求める原告を逆に邪魔者扱いしたのである。

三、 いったんは退職を決意するも、思い止まり、現職のまま裁判を闘うことを決意した彼女に対して、提訴後、全国から共感と激励、(勇気をもらったという)感謝のメッセージが相次いだ。しかし、提訴後、彼女に対するいじめがますます激しさを増し、提訴翌朝には、物置として使用している通称「奥の部屋」への勤務場所変更を命じられるといった始末である(直ちに抗議し、最終的には撤回)。

四、 イラク派兵の女性米兵は、護身用の武器を身につけて寝るという。同僚男性兵士の「凶行」から身を守るためである。米軍には「薬」と「酒」と「女」と「PTSD」が付きもので、これが兵士や家族を苦しめ、アメリカ社会を荒廃させていることは周知の事実である。日本をそんな国にしたくない、自衛隊員をそんなひどい目に遭わせたくない、そんな思いで裁判を取り組んでいる。

署名のお願い
自衛隊イラク派兵四年。その先に見えるもの
私たちに目を背ける権利はない……
弁護士 佐藤 博文
サマワに派遣された96式双輪走行車と
40o自動てき弾銃

私たちは、侵略戦争に加担しているのです
自衛隊のイラク派兵は、今年8月で第二次世界大戦(1941・12〜1945・8)と同じく44ヶ月になる(2003・12〜)。この間、イラク住民の死者は殺戮から飢餓・病死まで含め65万人と推定され(英医学誌ランセット)、米兵の死者は3600人以上、従軍民間人の死者は600人以上。政府は、6月に2年の派兵延長法案を強行採決し、航空自衛隊が米軍作戦を全面支援している。イラク情勢は泥沼化し、アメリカはイランにまで戦争を仕掛けようとしている。これが「人道復興支援」?冗談ではありません。
日本の自衛隊派遣は、侵略戦争への参戦以外の何ものでもありません。再び侵略戦争の加害者になっている、このリアリティと責任を、日本国民は余りにも不認識ではなかろうか。


DAYS JAPAN 2004.11
家族が殺され、自らも重傷を負った家の跡で

戦争経済化で、貧困と格差が急速に進行
折からの大企業優遇の構造改革に加えて、イラク戦争を契機に、防衛庁が防衛省に昇格になり、有事法制の具体化、弾道ミサイル防衛(BMD)など「小さな政府」「国防は国の責務」の名で、大企業に「戦争景気」が招来している。しかし、庶民の生活は、非正規雇用の増大、住民税増税、福祉・教育予算の削減、自治体財政の破綻・悪化で、絶対的貧困が急増し格差が拡大している。
実は、イラク戦争遂行の三大国=米英日は、貧困格差の世界ベスト3である。特に日本の「伸び」が著しい。戦争という究極の「公共事業」に国民の資産を湯水のように使い(アメリカは国家予算の五割=50兆円!)、教育・福祉・救貧には回さない。日本も、イラク戦争とともにこの傾向が顕著に進んだ。本当にこの方向でいいのだろうか


DAYS JAPAN 2004.08
息子の死体と面会する母親

国民を監視し、人権保障を後退させる
自衛隊イラク派兵を前後して、元自民党代議士・箕輪登さんの派兵差止訴訟をはじめ国民の平和・護憲運動が高揚した。立川テント村自衛隊官舎ビラ配布逮捕事件は、こうした反戦平和の活動に対する弾圧だった。今年六月に発覚した自衛隊情報保全隊によるイラク派兵反対運動の監視活動は、軍隊が政府の目となり手足となって、それに反対する国民を押さえ込もうとしている、軍隊の本質を示した。戦争は、人々の内心の自由、表現・政治活動の自由を奪い、憲法の基本的人権保障を蝕んでいく。

イラク侵略戦争に加担して四年。戦争と貧困・格差を許さず、世界中のどこの人々とも平和のうちに安心して生活できる社会を目指しませんか。共に立ち止まって考えてみませんか。


当事務所でブックレット及び書籍を扱っております。
書店で購入するよりも若干お安くお買い求めいただけます。ご購入ご希望の方は当事務所までご連絡下さい。

〈お問い合わせ先〉
イラク派兵差止北海道訴訟弁護団  事務局長  弁護士佐藤博文
TEL:011-231-1888 FAX:011-281-4569


悪徳訪問セールスから高齢者の被害を救済しよう
「クーリング・オフ」「消費者契約法」などを積極的に活用しよう
弁護士 石田 明義

道立消費生活センターは、最近、70才以上の高齢者の訪問販売の被害が45%増加したと公表しました。ひとり住まいの高齢者に何組ものフトンなどを次々と販売したケースもあります。同一の業者の繰り返しや関連グループ、セールスマンのネットワークではないかと思われますが、違う業者がセールスすることもあります。
高齢者は孤独な生活をしている人も多く、親切にされたり、居間にあがりこんだりされると不要な契約を断りきれない等の弱さもあり、被害にあいやすいのです。

一度も梱包を開封していないフトンばかりというケースも。悪徳な業者やセールスマンはクレジットローンを組ませて売買代金を回収し「あとは野となれ山となれ」という姿勢です。
このような違法、不当なケースには全く遠慮はいりません。不公正、不当な契約を解除できる「消費者契約法を適用する」とローン会社と販売会社に断固主張することです。

具体的にはローン会社と販売会社に対して「内容証明書」で違法や不適当と思われる具体的な販売の方法や不当な被害結果を指摘し、契約取消等を積極的に主張しましょう。
そして直ちにローン等の支払を停止しましょう。販売会社はローン会社との提携関係への悪影響をおそれて契約解消につとめることが多いのです。解決内容はケースによって異なりますが、多くのケースは被害解消には役立ちます。販売会社が倒産した場合や連絡がつかない場合もありますが、その場合でもローン会社との間でも妥当な解決ができます。

近く「クーリング・オフ」という無条件解約がすべての商品を対象にするよう改善される予定です。一定期間内にしなければならないという制限がありますが、期間を経過した場合でも消費者契約法や詐欺・錯誤など民法などの法律も活用して解決することは十分に可能です。また高齢者がすでに後見人等選任の条件がある精神状態の場合もあり、その場合にはローン会社に事情説明すれば被害救済が十分に可能です。高齢者の生活を支援する人は、是非、発生した結果に呆れる前に積極的に主張して対処しましょう。

母子加算削減は憲法違反!
子供の安心して生きる権利を奪わないで
弁護士 内田 信也

生活保護受給者のうち15歳以下の子どもをもつ1人親世帯に支給されていた母子加算(月額二万〜二万三千円)が、今年4月から削減されました。(厚生労働省は3年間で段階的に削減・廃止する方針)今回の削減額は、月額約七千〜九千円になりますが、去る5月22日、札幌、函館、苫小牧、小樽に住む22人のお母さんたちがこの減額処分の取消を求めて「不服審査請求」を北海道に対して行いました。

●「子どもが来年は高校と中学になります。母子加算をこれ以上削られると、生活ができません。」
●「3歳の子が喘息のため保育所にも行けません。母の協力を得てパートで働いていますが、大変です。」
●「パートの仕事をしていますが、私は一日一食しか食べられません。そんな生活が4月から続いています。」
●「修学旅行の積立も危うく断念させなければならないのかと不安です。」

母子加算削減・廃止の理由について厚生労働省は、「加算を含めると、一般の母子世帯と比べて、生活保護世帯の方が収入が多くなるケースがある」というのですが、そもそも、今の日本において、一般の母子家庭の生活が生活保護水準以下になっていること自体が大問題です。憲法25条「すべて国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」の理念からすると、母子加算を削って低い方へ合わせるのではなく、母子家庭への支援策を改善・充実させて全体の生活レベルをアップすることを考えるべきなのです。母子加算廃止を含む生活保護法制の改悪は、新自由主義の当然の帰結なのでしょうが、明らかに憲法違反です。不服審査請求が棄却されると訴訟を提起することになります。21世紀の「新」朝日訴訟といってよいでしょう。ご支援をお願いいたします。

江別市みどり保育園民営化に反対する裁判
―応援してください―
弁護士 三浦 桂子

今年4月、江別市みどり保育園が民間に業務委託されました。4月以降、保育士が一斉に変わり、民間の社会福祉法人の保育士が保育を担っています。
父母たちは、突然の民営化問題に「子供の安定した保育環境を守りたい。民営化するにしても慎重に」と江別市に説明を求めてきましたが、これを振り切っての民営化でした。
みどり保育園は江別市初の公立保育園として50年以上の歴史があり、子供が健やかに成長できるよう、外遊びや昔遊び、老人クラブとの交流など、積極的に取り組み、そこで働く保育士の経験年数も長く極めて専門性が高いことで評判でした。父母たちは、あちこちの保育園を見学し、このみどり保育園の保育を信頼して、我が子を入所させました。1日の大半を園で過ごす子供にとって担任の保育士は親と同じ。このきずなが4月を境に断ち切られてしまったのです。「先生はどこに行ってしまったの」、わが子の問いに答えるため、父母ら原告32名が民営化無効を主張して、裁判をおこしました。
「民営化=保育士の人件費削減」です。専門職にふさわしい保育士の賃金水準を保障することなくして保育の質を守ることはできません。是非、裁判を傍聴して応援してください。

離婚時の年金分割 弁護士 長野 順一

今年4月から離婚時の年金分割制度がスタートしました。
この制度について少しご説明しましょう。


(年金分割制度とは?)
離婚した場合に、厚生年金(共済年金も同様)を夫婦で分割できる制度です。
分割されるのは、婚姻期間中の厚生年金保険料の納付記録(夫婦の合計)です。分割されるのは現実に支給される年金の額そのものではありませんので注意する必要があります。


(請求できる場合)
年金分割ができるのは、第一に、今年4月1日以降に離婚した場合に限られ、それまでに離婚した場合は分割できないということ、第二に、離婚後2年以内に請求しなければならず、ずっと後になって申し出ても認められないということに注意する必要があります。


(分割の割合)
分割の割合は夫婦の話し合いで決めます、分割割合の上限は5割までです。分割割合について合意ができたら、社会保険事務所に分割を請求します。その場合、合意内容を公正証書にするか、合意の書面を公証に認証してもらう必要があります。


(分割割合を合意できない場合)
分割割合について、話し合いで決めることができない場合、家庭裁判所に申立をして、裁判手続によって分割割合を決めることができます。
裁判所で分割割合を決める手続としては、調停、審判、人事訴訟があります。離婚の調停や、裁判と一緒に申し立てることも、それらとは別に申立をすることもできます。


(分割のための情報提供)
分割割合を定めるために、正確な情報が必要となります。そのため、夫婦のどちらからでも、必要な情報を提供してもらうことができます。その際、一定割合(通常は5割)で分割した場合の具体的な金額の見込み(ただし、後に多少変動する可能性があります。)も教えてもらうことができます。
必要な情報は「年金分割のための情報通知書」に記載されて交付されます。この書類は裁判所に年金分割の割合を定める申立をする際に必要な書類ですので、申立前に必ずもらっておきましょう。


無念……中国「残留孤児」国賠訴訟敗訴 弁護士 加藤 丈晴

去る6月15日、札幌地方裁判所において、中国「残留孤児」国家賠償請求訴訟の判決が言い渡されました。残留孤児とは、国の移民政策により旧満州に渡り、戦後の混乱の中で子供時代に中国に取り残された人々です。彼らは、中国で苦難の日々を過ごしましたが、祖国に帰国後も、日本語ができず、経済的に苦しく孤立した生活を送っています。彼らの8割以上が生活保護を受給しているという事実が、彼らの困窮ぶりを象徴しています。彼らがこのような状態に置かれたのも、国が彼らを早期に帰国させるための義務を怠り、帰国後も彼らの自立を支援するための施策を十分に行わなかったためです。この訴訟は、このような国の責任を追及し、国にその償いを求めるものです。しかし札幌地裁は、国の早期帰国実現義務自体を否定し、自立支援義務についても、国の広範な裁量を認め、違法はないとして、原告らの請求を棄却しました。かかる不当な判決に対して、原告らは控訴し、舞台は札幌高裁に移されました。引き続き皆様のご支援をお願いいたします。

※本稿入稿後、孤児の方々に対する新たな国の支援策がまとまったため、原告の代表が7月11日安倍首相と面会しました。これを受けて、原告らは賠償請求権を放棄し、訴訟を終結させる方針となりました。

光市母娘殺害事件の差戻し審について思う 弁護士 笹森 学

山口県光市で当時18歳の少年が母娘を殺害し、最高裁で無期懲役の判決を破棄されて広島高裁に差し戻された事件で、殺意を否認した被告人と弁護団に轟々たる非難が巻き起こり、主任弁護人などに対する殺害予告、テレビでの懲戒請求の扇動に応じた集団懲戒請求が生じている。

今頃になって下らない否認の作り話をしているというのが「世論」だが、どんな極悪非道の被告人も弁護するのが弁護士の当たり前の仕事であり、その内容が下らないとか気に喰わないという理由で脅迫をしたり、懲戒の集団請求をすることは異常である。その当否を判断するのがまさに裁判の場だからである。

世論が主張することは「奴を早く吊るせ」ということである。それに抗して「あらゆる者が見捨てた時にも被告人とともに在るべし」という我々が作ったルールが、弁護人に命令されている内容である。皆さんのご理解を賜りたい。。

弁護士 笹森学の書評コーナー
 

「人間自身 考えることに終わりなく」 池田 晶子 (新潮社)

◆今年の2月23日、池田晶子が亡くなった。真善美こそ変わらぬ価値であり、それは生死という絶対に裏打ちされている。この単純明快な事実から「汝自身を問え」「正しく生きよ」と繰り返した哲学の巫女は私の人生の同伴者でした。47歳、佳人薄命の運命に泣きたい気持ち。「さて死んだのは一体誰なのか」という「墓碑銘」がいいと筆を置いた彼女は、私たちの心の中で「考えることに終わりなく」考えています。


「おじさん」的思考」 内田 樹 (晶文社)

◆傷心の私がふと出会ったのが内田樹(たつる)でした。神戸女学院大学でフランス現代思想を教える文学部教授にして合気道家であり男手一本で娘を育て上げた父子家庭のお手本の父(でも愛煙家)。専門は池田晶子が一刀両断した構造主義ですが、物言いは至って真面目で私はすっかり意気投合したのでした。「こつこつ働き、家庭を大事にし、正義を信じ、民主主義を守る……いまや風前の灯と化した『正しいおじさんの常識』擁護のためいま一人の論客が立ち上がった!」という本の帯そのまま。


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