北海道、札幌を中心とした北海道合同法律事務所が発行する「事務所通信:北の峰」の2006年 新春号をご紹介致します。

 北の峰のご案内

巻頭言  


 「下流社会」(三浦展著・光文社新書)という本がベストセラーになっている。冒頭、我国では所得の 不平等度の指標である「ジニ係数」(分布が平等であれば0に近づき、不平等であれば1に近づく)が、所得格差の著しいアメリカの水準に近づきつつあ るという深刻な事実が示されている。現在はほぼ0.5に近く、この値は、国民総所得の4分の3を、所得の高い方の4分の1の人だけで占めるという 状態であることを意味する。
 衆議院選挙での自民党の圧勝を受けて、小泉内閣のもとで、今、その流れは一層加速されている。
 成果主義賃金の導入や、派遣・パート労働など不安定雇傭が増加する中で、働く人たちが、益々無権利状態となり、労働条件がどんどん悪化している。 このことは、このジニ係数をまつまでもなく、最近は実感として理解できるまでになっている。とりわけ、若者の所得水準の低下は著しい。
 しかし、一層深刻なのは、これら低所得の若者が、働く意欲、学ぶ意欲、そして人生そのものへの意欲を失っていることだ。「ニート」といわれる若者の 増加はそのことを端的に示している。より良い仕事に就きたい、良い生活をしたいという意欲さえが失われつつあるようだ。
 ある研究所が行った「欲求調査」では、低所得の若者ほど「自民党」と「フジテレビが好き」だそうである。「つまらない」ことには目も向けず、ひた すら安易な「娯楽」番組を流し続けるフジテレビを好む若者。昨年の衆議院選挙での自民党の圧勝というのも「娯楽」として選挙を考えた結果であるのかもしれない。
 もし憲法が改正され、戦争に日本が参加するとすれば、真っ先に戦場へ送られるのは、これら若者である。若者は、自分の自身の明日の姿すら、自分 のこととして受け止めることができなくなっているように思われる。若者が、自分のおかれた状況を受け止められるようになるために、大人が努力を しなければならないのではないだろうか。

2006年 新春 北海道合同法律事務所一同

改憲につながる「国民投票法案」を阻止しよう! 弁護士 佐藤 哲之

◆ 加速された改憲スケジュール!
 昨年の総選挙で小泉自民党が大勝し、敗北した民主党が小泉自民党と「改革」を競い合う前原路線を選択しました。
 このような中で、小泉自民党は11月22日の結党50周年の大会で「新憲法草案」を決定しました。草案を一昨年の「憲法改正草 案大綱(たたき台)」と比べてみると、この国を、第九条二項を変えて「戦争しない国」から「戦争する国」にしようとすることや、人 権規定を作り変えて「等しく豊かになる国」をめざすのではなく、「階層化し、優勝劣敗の国」にしようという本質的要求はしっかりと 折り込んだ上で、今後の改憲をやり易くするために改正手続規定を緩和しようとしていること、中曽根流前文などあまりにも評判の悪かっ た部分が削られ、改憲案について民主党とのすりあわせを意識したものとなっていることに特徴があります。
 改憲スケジュールが一層加速される可能性が出てきた訳です。


◆ 改憲につながる「国民投票法案」を阻止しよう!
 憲法改正には、国会で各議院の総議員の3分の2以上の賛成による発議と国民投票による過半数の賛成が必要とされています。
 従って、改憲派はまだまだ困難な3つのステージを登り切らなければならないのです。「国民投票法」の制定、改憲案のすりあわせ、そして、国民投票という3つのステージがそれです。
 このうち第1ステージの「国民投票法案」がこの通常国会に上程されようとしていますが、ここでも、小泉自民党が、法案を内閣提出ではなく、議員立法の形をとろうとしていることに注目しておかなければなりません。改憲案のすりあわせを意識し 、「国民投票法案」の段階から民主党とのすりあわせを行い、民主党をしっかり取り込もうとしているからです。
 しかしながら、「国民投票法」はなんといっても改憲の必要がなければ制定する必要のないものです。
 「新憲法草案」では、九条二項を変えて、「自衛軍」を保持し、その自衛軍が「国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調して行われる活動」にも参加するというのです。これによって、国連軍という形ではない多国籍軍という形での軍事活動や国連安保理の判断を無視した米英のイラク攻撃のような軍事活動に参画しようというのです。目下の同盟者としてアメリカと一緒になり、世界を意のままにしようとすることなど許されません。そのような改憲のための「国民投票法」など必要ありません。上程阻止のため、直ちに行動を起こそうではありませんか。


◆ 「国民投票法案」の中身はとんでもないもの!
 「国民投票法」は改憲の中身を決めるものではありません。しかし、どのように賛否を問うかで改憲のハードルが下がりますし、運動に対する規制の仕方で、国民に主権者として行動することが保障されるかどうかが決まるのです。改憲派は、いま、とんでもない法案を用意しているようです。
 その内容は2004年12月3日の与党協議会実務者会議の報告に垣間見ることが出来ますが、特徴的な点を2、3挙げると次のとおりです。


1 憲法改正は主権の行使として最も重要なものですから、十分な国民的論議の期間が保障されなければなりません。しかし、 報告では国会の発議から30日以後90日以内の期日を投票日とするとされています。発議後30日では到底十分な国民的議論ができません。

2 主権者としての国民の意思は改正条項の1つ、1つについて問われるべきなのに、その点は「改正の発議の際に別に定める法律」によるとされ、発 議者の都合で左右される余地を残しています。

3 主権者としての国民の意思が正しく反映されるためには、なによりも国民投票運動の自由が最大限保障されなければなりません。
 しかしながら、罰則付で、公務員や教育者(「学校教育法に規定する学校の長および教員」とされ、公立学校の教員に限られない。)の運動が禁止され、 マスコミに関しても、新聞紙、雑誌および放送事業者の報道、評論、あるいは新聞紙、雑誌および放送事業者に対する働きかけが大幅に制限される 内容となっています。マスコミが社を挙げてキャンペーンを張ることも難しい内容です。


 「国民投票法案」は、そもそも必要ないばかりか、その内容においてもとんでもないものです。手続法だと侮らず、その成立を阻止することが改憲阻止への第一 歩なのです。阻止に全力を尽くしましょう。

(2005.12.12記)
話し合うだけで罪になる!? 共謀罪の謀略 弁護士 笹森 学

 ◇居酒屋で「会社のため馬鹿な上司を痛めつけよう」と憂さを晴らすと傷害罪の共謀罪、◇誠実に対応する まで団体交渉を継続すると決議して逮捕監禁罪の共謀罪、◇イラク戦争で破壊された小児病院再建に募金集めを計画していたN P O 職員がテロ資金規制法の共謀罪。 こんな社会を現実にするのが「共謀罪」です。解散総選挙で継続審議となり今国会への上程は見送られたものの、法務省は「犯罪の国際化及び組織化に対処する ための刑法等の一部を改正する法律(案)」成立をあきらめてはいません。この法案に「共謀罪」新設が盛り込まれています。この「共謀罪」とは、(1)長期4年以上の刑を定める犯罪につい て、(2)団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われるものの、(3)遂行を「共謀」した者は、(4)原則懲役二年以下とし、(5)犯罪の実行着手前に自首 したときは刑を減免する、と定める稀代の悪法です。

 通常、犯罪は、(1)共同謀議(共謀)→(2)予備(準備)→(3)実行(未遂)→(4)実行(既遂)、という段階を経て行われます。現在の刑法では、 (4)まで行い結果(実害)を発生させた者が処罰されるのが原則です。(3)の未遂も処罰されるのは例外であり、(2)の準備行為まで処罰され るのはさらに例外で、殺人、強盗などの重大犯罪に限られています。裁判所は、「2人以上共同で犯罪を実行した者は、すべて正犯とする」という刑法六〇条の規定か ら(1)の「共謀だけに参加した者も実行した者と同じ責任を負う」と解釈しました。手を汚さない悪い奴らを処罰するためです。これを 「共謀共同正犯」といいます。この「共謀共同正犯」は法務省が準備している「共謀罪」とは決定的に違います。それは、誰かが「実行」し ないと処罰されることはないからです。「共謀罪」は誰も実行しなくても(1)の段階だけで処罰するのです。

 しかも共謀罪という犯罪の実体は「相談」=言葉が証拠です。そのため警察は言葉を証拠するため「盗聴」を多用します。聞き込み捜査が中心となり、法案(5)に よって「話せば許される」として、人を罪に陥れる供述を強要する危険が高まります。さらには尾行、潜入捜査、おとり捜査などが頻繁に使われます。要するに、 国家権力の日常生活への介入の度合いが飛躍的に高まり、監視・密告社会へと拍車をかけることになります。しかも自白中心の捜査に逆 戻りします。法務省は、共謀罪などの新設は、2000年に国連総会で採択された「国連国際組織犯罪防止条約」を批准するために必 要なことだと説明していますが真っ赤なうそです。条約のためなら、法案の(1)で「国際的な犯罪」に、法案の(2)で「組織的な犯罪集団の 犯罪」に限ればいいのです(これは当初国連で政府が主張していました)。しかし何ら限定をしていないため、(1)で対象犯罪は消費税法など5〜600件にも及ぶと 言われ、(2)で労働組合やNPO などあらゆる団体を含みます。しかも条約では「合意(共謀)の内容を促進する行為を伴」う場合に限 って処罰することにできるのに、法務省は「他の選択肢はない」と嘘をついています。国連での議論の当初わが国は「共謀罪などの制定はわが国の法体系に反す る」と主張していました。法制審議会で法務省幹部は「外圧はあるが国内で立法の必要性はない」とも発言しています。

 戦争国家を目指す憲法改悪動向ともに弾圧国家への謀略がまさに「共謀」されています。
 皆さん、自由で民主的な社会を守るため「共謀罪」法案と闘い、粉砕しましょう。

誰のため?何のため?「労働契約法」を考える 弁護士 三浦 桂子

 厚生労働省は、遅くとも2007年に「労働契約法」成立をめざしています。その「労働契約法」の基本的な あり方を示す報告書が、2005年9月に公表されました。この報告書は、働く私達にとって、非常に危険 な内容になっています。その一部をご紹介します。


1 解雇の金銭解決制度金銭で労働者を追い出す!
【報告書の内容】
ア 解雇が無効と判断されても、使用者からの金銭支払により解雇された者との労働契約を終了する制 度を認めることが適当ではないかと考える。
イ 差別的解雇、年次有給休暇等の正当な権利行使を理由とする解雇を行った使用者に対しては、認めない。
ウ 解決金の額は、個別企業であらかじめ労使で合意している基準によるとするのが適当である。


【問題点】
ア 例えば、組合活動家を職場から追い出すための解雇に利用される。使用者が職場の同僚に「あの人 は、仕事が雑で、笑顔がなく一緒に働きたくない」という上申書を書かせれば、差別的解雇である ことは隠すことができる。苦労して解雇無効の裁判を勝ち取っても、金で追い出される。
イ 解決金は低額になる可能性が高い。
ウ 働くことは労働者の「権利」。金銭で奪うことを認めてよいのか。

※宮の森病院・労組役員の解雇無効判決?札幌高裁(05年11月30日)
「笑顔がない」などの理由で雇い止めされた女性介護職員(28歳)について、札幌高裁は一審判決と同様に解雇を無 効とし、更に、「組合活動が雇い止めの背景としてあることがうかがわれる」として慰謝料を25万円から50万円 に増額しました。病院側は上告を断念。女性は今年1月からの職場復帰(3年5カ月ぶり)を勝ち取りました。

2 労使委員会制度労働条件切り下げの下請け機関?
【報告書の内容】
ア 使用者と労働者の代表とで構成される労使委員会を常設し、労働条件の決定・変更などについて協 議する。(半数以上が労働者を代表するもの)(過半数組合が存在する場合も、併存は可能)
イ 労使委員会の賛成決議があれば、就業規則の変更が合理的であると推定される等の効果を与える。
ウ 労働者を配転、出向、解雇する場合、労使委員会で事前に協議したことを、解雇等の有効性の判断要素の一つとする。


【問題点】
ア 労働者代表委員が対等な立場を実現できるのか。労働者代表委員の直接選挙・無記名投票等、民主 的に選出される整備がされていない。
イ それなのに、与えられる権限は大きく、労使委員会は、賃金切り下げや、労働者の追い出しのため の下請機関となる危険がある。

その他、報告書は問題点ばかり。到底、受け入れることはできません。
裁判員制度とその問題点 弁護士 加藤 丈晴

1 裁判員制度とは
 裁判員制度とは、一般国民が裁判員として刑事裁判に参加し、裁判官とともに被告人が有罪かどうか、有罪の場合どのような刑にするのかを決める制度です。裁判員の参加する刑事裁判に関する法律により、2009年5月までに開始されます。
 裁判員制度は、司法制度改革の一環として導入されました。一般国民が刑事裁判に参加することにより、裁判が身近で分かりやすいものとなり、司法に対する国民の信頼向上につながることが期待されています。


2 対象事件
 裁判員裁判の対象となる事件は、死刑又は無期の懲役・禁錮に当たる罪に関する事件及び法定合議事件(短期1年以上の懲役若しくは禁錮にあたる罪の事件)であって故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪に関する事件で す。例えば、殺人罪、強盗致死傷罪、傷害致死罪、現住建造物等放火罪などがこれにあたります。


3 裁判員の選任手順
 まず、選挙権のある人の中から「くじ」で翌年度の裁判員候補者となる人を毎年選定し、裁判所ごとに裁判員候補 者名簿を作成します。
 次に、裁判所において、裁判員候補者名簿の中から事件ごとに裁判員候補者を「くじ」で選定します。裁判員候補者 は裁判所に呼び出され、裁判長から、欠格事由(義務教育を修了しない者、禁錮以上の刑に処せられた者など裁判員 になることのできない事由)の有無や辞退理由(70歳以上であること、学生であること、重要な用務があることなど)の有無、および不公平な裁判をするおそれがないかどうかの判断をするために必要な質問を受けます。裁判所は、 この質問の結果、裁判員に選任しない者を決定します。さらに、検察官及び被告人は裁判員候補者について、それ ぞれ、4人を限度に理由を示さず不選任請求することができます。これらの手続を経た上で、裁判所は、裁判員を選任する決定をします。


4 裁判員の職務
 裁判は、裁判官3人と裁判員6人の合議体で行います。裁判員は裁判官とともに公判(刑事事件の審理)に出席し、 その裁判にかかわる証拠を検討したり、証人尋問、被告人質問などを行います。証拠をすべて調べた後、事実を認定 し、被告人が有罪か無罪か、有罪だとしたらどのような刑にすべきかを、裁判官と一緒に議論し(評議)、決定します(評決)。 評決は多数決により行われますが、その多数意見には、裁判官、裁判員のそれぞれ一人以上の賛成が必 要です。評決内容が決まると、法廷で裁判長が判決の宣告をします。裁判員の職務は判決の宣告により終了します。


5 裁判員が負う義務
出頭義務・・・裁判員は、公判期日や、証人尋問・検証が行われる公判準備の場に出頭しな ければなりません。また、評議に出席し、意見を述べなければなりません。正当な理由なく出頭しない場合には、10万円以下の過料が課されます。

守秘義務・・・裁判員は、評議の経過や、それぞれの裁判官・裁判員の意見やその多少の数(「評議の秘密」とい 。)を漏らしてはいけません。この義務は、裁判終了後も負うことになります。裁判員が、評議の秘密や職務上知り得た秘密を漏 らしたときは、6カ月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されます。この義務は終生負うことになります。


6 問題点
 司法に対する国民参加を実現する裁判員制度ですが、いくつかの問題点も指摘されています。
 まず、裁判員は裁判官と対等に議論できるかという問題があります。法律の専門家である裁判官3人に、素人であ る裁判員が6人という構成では、最終的には裁判官の意見が押し通される可能性が高く、市民が単なるお飾りにな ってしまう危険性があるということが指摘されています。
 また、裁判員の負担を軽減するために、裁判は連日開廷が原則となりますが、弁護士がこれに対応できるのかとい う問題があります。特に連日被告人との打合せが必要になりますが、拘置所で接見できる時間は決められており、電話等による接見の導入の必要 性が言われています。
 より深刻なのが裁判員の確保の問題です。裁判員になると、公判の間、仕事を休まなければなりませんし、有罪・ 無罪、刑罰といった人の人生を左右する重大なことを決めることになり心理的にも重荷を負うことになります。その 上に評議の内容を漏らすと罰則もあります。2005年2月に内閣府が行った世論調査においても、7割の回答者が 「裁判員になりたくない」と回答しており、裁判員制度に対する国民の理解の促進が課題になっています。

新北海道石炭じん肺訴訟について 弁護士 長野 順一

 (1)2004年4月27日、最高裁は、筑豊じん肺訴訟において、炭鉱夫じん肺に対する国の責任を認めた福岡高裁の判断を正当として、 国の上告を棄却した。この最高裁判決を受けて、国は、北海道石炭じん肺訴訟札幌高裁において七九名の原告のうち、70名との間で損 害賠償責任を認めて訴訟上の和解をし、国がじん肺加害責任を認めてじん肺患者や家族に謝罪するとともに、国の責務として今後十分なじん肺防止対策を実施する ことを誓約した。
 他方、残る9名のじん肺患者については、除斥期間の経過を理由として、和解を拒否したため、札幌高裁は、同日、この9名についてあらためて国のじん肺加 害責任を認めるとともに、国の除斥期間の主張を排斥し、じん肺患者9名への損害賠償を命じる判決をした。これに対して国は、最高裁 に上告受理の申立を行ったが、2005年7月14日、最高裁は、国の上告を受理しない旨の決定をし、上記札幌高裁の判決が確定した。


 (2)この長い闘いで、石炭企業はもとより国の加害責任が明確になった。しかし、それですべての炭鉱夫じん肺問題が解決した訳ではな い。未だに、元炭鉱夫の中から毎年、あらたに重症なじん肺患者が発生しているし、未だ救済されていないじん肺患者が多数いる。
 本来、これらのじん肺患者は、国と加害企業の責任において、裁判によらずに救済するシステムを確立すべきであるが、 未だそのような段階にはいたっていない。
 そのため、未だに救済されずにいるじん肺患者の皆さんが、新たに声を上げて、2005年9月、「石炭じん 肺請求団」を結成した。現在まで、弁護団には現在700名を超えるじん肺患者から救済を求める声が寄せられている。
 請求団は、2005年10月、国を被告として109名が提訴するとともに、加害企業に対して、救済を求める交渉を開始した。


 (3)すべてのじん肺患者が救済され、1日も早くじん肺という悲惨な職業病を地上からなくすために、じん肺患者の皆さんは闘い続ける決意をしている。

弁護士一年目を振り返って
弁護士 加藤 丈晴

 北の峰の昨年新春号で、「新人弁護士ごあいさつ」を載せていただいてから、早一年が過ぎました。この一年は 本当に怒濤のように過ぎ去ったような気がします。はじめは相談室に入るだけで心拍数が上がったものでしたが、今ではすっかり度胸がすわってきました。他の事務所の先生方にも、「えっ!?君一年目だっけ?そんなふうに見えないなあ」とか、「随分前から 札幌弁護士会にいるような気がするよ」などとありがたい(?)お声をかけていただいています。
 この一年で、債務整理約100件、一般民事事件約30件、刑事事件は約20件受任しました。またトンネルじん 肺や新石炭じん肺、中国残留孤児、原爆、富川水害の各弁護団に参加させていただき、個性豊かな先生方から日々勉 強させていただいています。弁護士会の委員会活動も、刑事弁護センターや子どもの権利委員会、裁判員制度実施本 部などに所属し、お昼は連日委員会の会議で出されるおにぎりとサンドイッチで済ませる日々です。
 この一年で様々な人々と出会い、それらの人々の悩みや苦しみ、悲しみ、怒りに触れてきました。そのあまりの重 さ、深刻さに圧倒され、依頼者の方々の気持ちに十分応えられずに悩むこともありました。しかし、それらを全て受 け止めて、解決しようというのはそもそも奢りなのかもしれません。弁護士といえども1人の人間ですからできるこ とには限界があります。それを踏まえた上で、一定の解決に結びつけることが大切だと思っています。実際に、自分 が関与したことにより、最善の解決であったかどうかはともかく、まったく動かなかった事態が良い方向に進んでい ったり、こじれた関係が一定の方向に収束していったこともあります。そういう時に依頼者の方が見せる心からホッ とした顔が、一番自分を勇気づけます。
 まだまだ未熟者ですが、これからもご支援のほど、よろしくお願い致します。

弁護士 笹森学の書評コーナー
 

「下妻物語」 中島哲也監督 (キネマ旬報二〇〇四年第三位)
「下妻物語−ヤンキーちゃんとロリータちゃん」 嶽本野ばら (小学館文庫)

◆ なあ、桃子。女は人前で泣いちゃいけないんだよな」「うん。でもここには今、誰もいないよ」
◆ 茨城県下、四方八方田んぼだらけの町、下妻。尼崎から越して来た高2の竜ヶ崎桃子は2時間半かけて代官山に通 い、BABY,THE STARS SHINE BRIGHTのロリータ服を身に纏い、借りは返さない「孤高」 のロココ主義を厳格に貫いている。パシリから一念発起してレディース暴走族チーム舗爾威帝劉(ぽにいている)に所属する高2の白百合イチコことイチゴは紫の特攻服を身に纏い、借りは必ず返す「主義」のバリバリのヤンキー。桃子 のダメオヤジが手がけたバッタもののVERSACE のジャケットをイチゴが買いに来て2人は知り合う。水と油の2人はつかず離れず行動を共にするようになる。チームから「ケジメ」を求められて牛久大仏裏の墓地に単身赴くイチゴの跡を「事情は知らないけれど、凡、あのコが大変なんだろ」と祖母の原チャリを駆って運動音痴の桃子は追いかける。
◆ C M ディレクター中島哲也が映像技術の粋を集めて作った「下妻物語」は、めくるめく色彩のマジックと妙に生々 しいリアリティが絡み合って疾走する愛と涙と友情の傑作青春映画。土屋アンナと深田恭子は、見事ヤンキーちゃん とロリータちゃんのイメージを完璧に造形した。
◆ 「こいつ、桃子はよ、ダチなんかじゃねーよ。……こいつは、何時も1人で立ってるんだよ。誰にも流されず、自 分のルールだけに忠実に生きていやがるんだよ。群れなきゃ歩くことも出来ないあんたらと、格が違うんだよ」「あた いのダチに金輪際手を出さないって誓うんなら茨城の1つや2つあげたって構わねエんだよ!」
◆ そして原作も見事な快作。噂の〈嶽本野ばら〉は正真正銘芥川賞的天才エンターテナーです。


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