北海道、札幌を中心とした北海道合同法律事務所が発行する「事務所通信:北の峰」の2004年 夏号をご紹介致します。

 北の峰のご案内

巻頭言  

 「『あの人を……』と女は消え入りそうな声で、祈るように云った。『助けてください!』梶はうなずいた。助けねばならない。彼自身の存在が人間として危うく失格しかけているのだ。梶はも一度うなずいた。確信ではなかった。自分自身への絶望的な戦を宣する合図かもしれなかった。」(五味川純平「人間の条件」=文春文庫より)「人間の条件」、戦争とはまさに人間の条件とは何かを問うものである。戦争は人間が人間として生きることを拒み、その中でなお人間として生きようとする者に、耐えがたい試練を与え続け、その果てに自らの死か、人間としての尊厳の放棄の二者択一を求める。アメリカ軍のイラク人収容所における暴虐三昧は論外であり、いかなる弁解も許されない。軍の、上司の命令だなどという戯言は通用しない。しかし、如何に誠実に生きようとしても、それを許さないのが戦争の現場の実態であることも事実である。
 日本は第二次対戦後、曲がりなりにも直接の戦争をせずにきた。しかし、今、国際貢献の名のもとに(それが全くのまやかしであることは誰でも知っている。)、戦争国家への一歩を再び歩み始めた。私たちは、戦争の現場で誠実に人間の条件を守り死ぬか、人間の尊厳を放棄し鬼畜の所業に狂奔するかの「自由」を与えられようとしている。私たちは、自分の子孫に対し、どのような言い訳が可能なのだろうか。沈黙は許されない。
 「雪は無心に舞い続け、降り積もり、やがて、人の寝た形の低い小さな丘を作った」(同)

2004年8月  北海道合同法律事務所一同
大儀なき戦争を止めよ
いまこそ平和憲法を実践しよう
弁護士 佐藤 博文

イラク派兵差止−北海道訴訟−

◆ 訴訟提起の経緯
 今年1月9日、石破防衛庁長官は、本道の旭川に司令部を置く北部方面第二師団を中心とする陸上自衛隊先遣隊に派遣命令を出し、続いて同月26日に本隊に派遣命令を出した。わが国は戦後58年目、自衛隊創設50年目にして、遂に「戦地」に自衛隊を派遣した。その規模は約600名。
 本訴訟は、自衛隊本隊が日本を出発する直前、1月28日に提訴した。
 原告の箕輪登氏(80歳、医師)は、通算8期23年間、衆議院議員を務め、この間に防衛政務次官、衆議院安全保障特別委員会委員長、自民党国防部会副部会長、副幹事長などを歴任し、「専守防衛」の憲法解釈、防衛政策を体現してきた(1990年引退)。「タカ派」で鳴らした政治家である。


◆ 箕輪氏の「専守防衛論」
 箕輪氏は、湾岸戦争の掃海艇派兵の時から、自衛隊を日本国外に出してはならないと訴え続けてきた。自衛隊の任務はあくまで「我が国に対する外部からの武力攻撃が発生した事態または武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していると認められるに至った事態に際して」(自衛隊法第76条1項)防衛出動することにあり、かような「事態」がないのに海外で武力行使することは絶対にあり得ない、日本の外交は血を流さないものでなければならないとして、強い危機感と使命感の下に、提訴を決意した。
 イラク戦争における日本人被害者は九名に及んでおり(外交官、ジャーナリストら4名死亡、5名人質。6月25日現在)、箕輪氏の危機感は現実のものとなった。


◆ 北海道訴訟の特徴

▲ 平成16年3月29日 第一回口頭弁論の
入廷・中央箕輪氏、その他原告弁護団

 イラク派兵差止訴訟は、札幌のほか、名古屋(2月)東京(3月)、大阪(4月)、静岡(5月)で提訴されている。米英のイラク侵略戦争反対、自衛隊派兵反対、憲法九条守れの奔流となりつつある。
 北海道訴訟の第一の特徴は、自衛隊合憲、日米安保賛成の人から、自衛隊違憲、日米安保反対の「護憲派」の人まで、「海外派兵反対」の一点で大同団結しようという点にある。箕輪氏は「超党派原告団」の実現を訴えている。
 第二の特徴は、アラブ世界にこの訴訟の取り組みを発信し続け、小泉首相の誤った政策に対して、本当の国民世論と良識を示していくことである。人質の高遠さんや今井君が解放されたのは、この「国民世論と良識」が通じたからにほかならない。
 第三の特徴は、北海道内の約420名の弁護士のうち、109名が原告代理人に名を連ねたことである。道内弁護士の実に4分の1を越える数である。この英知の結集と道民の応援で、イラク派兵違憲判決を勝ち取ることである。


◆ 皆さんの応援を

▲ 2004年1月29日しんぶん赤旗

 第一回弁論は3月29日に、第二回弁論は6月14日に行われた。第三回弁論(8月23日午後4時)、第四回弁論(11月1日午後3時)も決まっている。
 裁判の内容は全て本訴訟弁護団のホームページに掲載されている。是非ご覧いただきたい。


◆ イラク民衆への戦争加害者にはなりません
 昨年3月20日に始まった米英軍によるイラク武力侵攻から1年が経った。今年5月に連合国暫定当局(CPA)自らが行った調査によると、連合軍を解放軍とみなしているイラク人は僅か2%、平和維持軍とみなしているのが3%、占領軍とみているのが92%である。武力衝突が全土で頻発しているにもかかわらず、米軍が即時に撤退した方が安全になるとする回答が55%に上る。それは、他ならぬ米軍がその原因だからである。自衛隊を派遣し、米軍とともに行動している日本にとって、この意味は深刻である。人道復興支援とは名ばかりで、実際は米軍による殺害を「後方支援」し、イラク民衆から憎悪と敵意の対象となっている。


イラク民衆への戦争加害者にはなりません
憲法違反の自衛隊派遣・多国籍軍参加は直ちに止めよ

昨年3月20日に始まった米英軍によるイラク武力侵攻から一年が経った。今年5月に連合国暫定当局(CPA )自らが行った調査によると、連合軍を解放軍とみなしているイラク人は僅か2%、平和維持軍とみなしているのが3%、占領軍とみているのが92%である。武力衝突が全土で頻発しているにもかかわらず、米軍が即時に撤退した方が安全になるとする回答が55%に上る。それは、他ならぬ米軍がその原因だからである。自衛隊を派遣し、米軍とともに行動している日本にとって、この意味は深刻である。人道復興支援とは名ばかりで、実際は米軍による殺害を「後方支援」し、イラク民衆から憎悪と敵意の対象となっている。

◆ 米英の侵略戦争
 米英は、イラク戦争開始の理由として、国際テロ組織に援助を与えていること、生物化学兵器など大量破壊兵器を開発・保有していることを挙げた。日本の小泉首相も、これを支持した。
 しかし、今日まで、フセイン政権と国際テロ組織とを結びつける証拠は、何ら発見されていない。
 また、イラクで大量破壊兵器を捜していた米調査団は、1,400名態勢で約7カ月を費やしたにもかかわらず発見できなかった。
 いまや、イラクの石油を狙った侵略戦争だったことが明らかになっている。


◆ 非人道的な戦争
 今年4月、占領政策に焦った米軍は、バグダット西方に位置し、旧フセイン政権の中枢を担ったスンニ派住民が多く居住しているファルージャ市を、主要道路を完全封鎖して包囲、空と陸からの徹底した掃討作戦を展開した。数日間に600人以上のイラク民衆が死亡した。特に、米軍ヘリコプターが、結婚式中のモスク(イスラム礼拝所)にミサイル3発を打ち込んで、40人以上の一般市民を殺害したことは、イラク民衆の怒りを呼び「ファルージャをアメリカから救え」の旗印の下に、国民が結集することになった。高遠菜穂子さんら日本人人質事件が発生したのはまさにこの時で、当時頻発した人質事件は、米軍に対するレジスタンスだった。


◆ 米軍と同じ「征伐」する側に
 日本政府は、アメリカのファルージャ掃討作戦を事実上支持し、日本人人質事件が発生したとき、小泉首相は犯人たちを「テロリスト」と呼んで、アメリカと同じ「征伐」する側に立つことを明言した。
 国際人道法(国際交戦法規)によれば、文民(戦闘に加わっていない民間人)を人質に取ることは禁止されており、犯人たちの行為は絶対に許されるものではない。しかし、米軍による無防備のファルージャ民衆に対する攻撃も同様である。
 そもそも、イラク特措法は、CPA の指揮下に入らず、中立的立場で人道復興支援を行うという建前である。日本政府の言動は、イラク特措法にすら反し、イラク民衆の憎悪と敵意を決定的なものとした。


◆ いま私たちは戦争加害者
 日本政府は、6月末のCPAから暫定政府への主権移譲に伴い、イラクの治安を守る多国籍軍に参加することにした。しかし、多国籍軍は「イラクにおける安全と安定を維持するのに役立つあらゆる必要な措置をとる」とされており、中身は従前と変わらない。
 従って、これに自衛隊が参加することは、イラク民衆から見れば米軍と同じ「占領軍」であることが法的にも明瞭となったということである。
 「あらゆる必要な措置」には、当然武力行使も含まれるから、憲法九条の交戦権の否認、武力の不行使に抵触することは明らかである。「イラク民衆への戦争加害者になることを拒否します」―自衛隊のイラク戦争参加で憲法九条は大きく傷ついた。私たち日本人とイラク民衆との平和友好関係も大きく傷ついた。一刻も早く撤退させ、憲法九条を再生させようではありませんか。

子どもの権利条約批准10周年
私たちがつくる!札幌版「子どもの権利条例」
弁護士 内田 信也

 子どもの権利条約の批准から10年目を迎えました。しかし、児童虐待・いじめ・不登校・非行など日本の子どもたちをとりまく現実は深刻です。子どもの権利条約の理念は、毎日の生活の中で活かし実現していくことが必要ですが、この春、札幌市は、「子ども未来局」を創設し、「子どもの権利条例」制定へ向けて動き出しました。


 国連子どもの権利委員会は、本年1月30日に「第二回政府報告書」に対する最終見解を採択しました。日本は1994年に子どもの権利条約を批准していますから今年でちょうど10年目になります。条約の国内実施状況は、最初は2年以内に、その後は5年ごとに、日本政府が国連子どもの権利委員会に報告して審査を受けなければなりません。
 「第一回政府報告書」に対する国連子どもの権利委員会の最終見解(1998年)は、日本の子どもたちの現状について「高度に競争的な教育制度によるストレスにさらされ、かつその結果として余暇、身体的活動および休息を欠くに至っているため、子どもが発達障害におちいっていること、そして、不登校・登校拒否の数が看過できない数に上っていること」を心配し、日本政府に対し「過度なストレスおよび不登校・登校拒否を防止し、かつ、それと闘うための適切な措置をとるように」と勧告していました。
 さて、5年たった日本の子どもの状況はどうだったでしょうか。


 この度の最終意見では次のように指摘されています。
 「(第一回)勧告のうち、……過度に競争的な学校制度、いじめを含む学校における暴力については、十分な対応がなされていなかった。委員会は、それらの懸念と勧告を本文書においても、再度繰り返す。」
 要するに、この5年間、日本政府は、何もしてこなかったということです。


 何もしてこなかった、だけならいいのですが、そうではありません。現在、わが国では、教育基本法の「改正」が議論されています。また、昨年12月には「青少年育施策大綱」が発表され、この大綱を青少年の健全育成政策の基本と位置づける「青少年健全育成基本法」が与党提案で、先の通常国会に提出されました。これらの基本法の制定、改正、策定にあたっては、子どもの最善の利益が全く考慮されず、その過程に子どもが参加していません。これは、まちがいなく子どもの権利条約に反した内容・手続です。
 ところが、日本では、裁判所も行政も子どもの権利条約を適用する、という発想が全くないのです。
 この点につき今回の最終意見は「(日本の)国内法が権利条約の原則および条項を完全に反映していないこと、条約が裁判所により直接適用できるにもかかわらず、実際上は適用されていないことを懸念する。」と厳しく指摘しているほどです。国際的に大変恥ずかしいことであるとともに、政府は「子どもの権利条約を正面から受けとめて、子どものために大人の責任を果たそう。そのために国内法を整備しよう」という考えを全く持っていないことがわかります。いやはや、10年たってもこの体たらくで、実に情けないかぎりです。


 さて、子どもの権利条約は、子どもの権利のリストを網羅していますが、一番大切なのが次の二つの条文です。

第三条
子どもにかかわるすべての活動において、その活動が公的もしくは私的な社会福祉機関、裁判所、行政機関または立法機関によってなされたかにかかわらず、子どもの最善の利益が第一次的に考慮される。
第一二条
日本国は、自己の見解をまとめる力のある子どもに対して、その子どもに影響を与えるすべての事柄について自由に自己の見解を表明する権利を保障する。その際、子どもの見解が、その年齢および成熟度に従い、正当に重視される。

 いかがでしょうか。「子どもの権利」というと拒絶反応を起こす人もいるかもしれませんが、これからの21世紀、子どもの権利と女性の権利を理解できないようでは、一人前の社会人とはいえません。
 そういう「時代」なのです。すなわち、これまでの子ども観は「子どもは未熟なのだから親が子どもの幸せを考えて導いてあげなければならない」 というものでしたが、これからは、「子どもの主体性を認めて、子どもにかかわることは子どもの意見を尊重して、子どもの最善の利益を判断しなければならない。」のです。


 日本政府は子どもの権利条約にのっとって、国内法の整備や新制度の確立に向けてやる気は、全くありません。そうなると、どうしたらよいか。
 現代は、地方の時代です。国に頼る必要は全くありません。子どもの権利条約の理念を「条例」によって実現すればよいのです。全国的には川崎市の「子どもの権利条例」が有名ですが、北海道でも奈井江町が「子どもの権利条例」を策定しています。そのほか、富山県小杉町、岐阜県多治見市、大阪府川西市など、全国各地で「子どもの権利条例」がつくられています。
 そんな中で、札幌市が子どもの権利条例策定のために「子ども未来局」をつくり、本格的に動き出したというのですから、こんな喜ばしいことはありません。はたしてどんな条例になるか。カギは、その策定過程にどこまで市民と子どもたちが参加して行けるかということです。
 今後は、「子ども未来局」が中心になって札幌市内で子どもの権利条例制定へ向けたさまざまなシンポジュウムや集会が予定されています。みなさんも是非積極的にご参加ください。
 子どもから笑顔が消えた社会に未来はありません。市民と子どもたちが参加して全国に自慢のできる札幌らしい「子どもの権利条例」をつくりましょう。

「セイブイラクチルドレン札幌」を結成しました。
罪のない子どもだちが私たちと同じこの地球のなかで
今、誰のためにもならない非人道的な戦争のために深く傷ついています。

弁護士 渡辺 達生

 私も、共同代表の一人となって、本年6月5日、セイブイラクチルドレン札幌を結成しました。
 自衛隊のイラクからの撤兵を求める運動を続けていくことも重要ですが、私たちが、イラクの民衆に対して、協力できることを探し、具体的に取り組んでいくことも重要です。
 名古屋の小野万里子弁護士が中心になってセイブイラクチルドレン名古屋が結成され、イラクの子供たちに対する医療支援を行っています。イラクに対する医薬品の援助や、イラクの医師の日本での研修等が取り組まれ、高い評価を受けています。イラク人医師による劣化ウラン弾の被害についての講演が札幌でも行われましたが、その医師もセイブイラクチルドレン名古屋の招きで、研修をしている医師です。
 札幌でも自分たちでイラクの子供たちに対する医療支援に取り組むために、セイブイラクチルドレン札幌を結成しました。現在、セイブイラクチルドレン札幌では、イラクへ医療機器を送ろうという取り組みをしています。道内の医療機関等から、ポータブルレントゲンや車椅子等を多数ご提供いただきましたが、送るための費用や医薬品等の購入費用がまだまだ不足をしています。皆さんも是非、カンパをお寄せください。カンパの送金先は下記のとおりです。セイブイラクチルドレン札幌の活動については、今後の北の峰でもお知らせしていきます。

住基ネット差し止め訴訟について
弁護士 芝池 俊輝

◆ 住基ネットとは
 2002年8月5日、住民基本台帳ネットワークシステム(「住基ネット」)が稼働を始めました。住基ネットとは、各地方自治体が管理する住民基本台帳を電子化し、コンピューターネットワークを介して情報を共有するシステムのことで、すべての国民に11桁のコード番号をつけて一元的に管理することにより、行政サービスを合理化し、住民サービスを向上させることを目的として導入された制度です。


◆ 住基ネットの問題点
 住基ネットは、個人の住民票コード・氏名・生年月日・性別・住所・変更履歴という六項目からなる「本人確認情報」を各市町村間で共有し合うとともに、国の行政機関などがその個人情報を確認・利用することができる仕組みになっています。本人確認情報の一つである住民票コードとは、市町村長がそれぞれの市町村内に住んでいる国民に付番するもので、番号のみで個人の識別を可能とするものです。
 この制度によって、全国共通の本人確認が可能となることから、総務省は、「全国どこの役所でも住民票を発行してもらえて大変便利な制度である」といいます。
 しかし、国家・行政機関が保有している膨大な個人情報が共通番号である住民票コードの下に保存・蓄積されることになれば、それらが容易に検索・照合されることにより、国家や行政機関によって個人のプライバシーが丸裸にされてしまうおそれがあります。そればかりか、近い将来、この住基ネットが「国民総背番号制」に姿を変え、国民のあらゆる個人情報が管理され、その生活がすべて国の監視下に置かれることにもつながりかねません。
 また、全国どこの市町村からも特定の人の現住所地を調べることができるため、ストーカーやドメスティックバイオレンスの被害者にとっては大変深刻な問題となっています。
 さらに、住基ネットの運用に携わる関係者や外部からの侵入者などによって、個人情報が外部に漏洩し、それが悪用される危険性も指摘されています(なお、長野県は、2003年10月に独自に侵入テストを行い、その結果、「システムにセキュリティ上の欠陥があり、インターネットから侵入可能だった」と発表しています。)。


◆ 差し止め訴訟の提起
 このように重大な問題がある住基ネットについて、2004年3月31日、北海道在住の15人の市民が、国、北海道及び財団法人地方自治情報センターを被告として、その運用の差し止めと損害賠償を求めて訴訟を提起しました(すでに東京、大阪、名古屋、福岡など11の裁判所に同種の訴訟が起こされています。)。この訴訟には道内の弁護士50人が代理人として名を連ねており、中国残留孤児訴訟、イラク自衛隊派兵差し止め訴訟などと並ぶ大弁護団を結成しています。訴訟では、プライバシー権や人格権といった基本的人権を侵害する住基ネットの違憲・違法性を主張しており、今後は、裁判の中で住基ネットの全貌が明らかにされるとともに、正面から憲法問題が争われることになります。
 次回弁論は、2004年9月30日午前10時30分から札幌地方裁判所で開催されますので、興味のある方はぜひ傍聴にお越し下さい。

道警の報償費不正支出問題について 弁護士 渡辺 達生

 2003年2月24日、北海道の旭川中央警察署における報償費の不正支出問題が新聞報道で明らかになりました。
  旭川中央警察署の捜査用報償費の会計書類のコピーがマスコミに持ち込まれ、その書類の裏付けをとったところ、驚くべきことが明らかになりました。それらの書類では、36人に対し、捜査用報償費が支払われたことになっていましたが、連絡先が判明したのが11人であり、内2人は報償費が支払われた1997年にはすでに死亡しており、残る九人のうち、連絡が取れなかった1人を除く8人全員が「身に覚えがない。」と報償費の受領を明確に否定しました。


 マスコミ報道の直後に、札幌弁護士会の若手を中心に24人の弁護士で住民監査請求を行いました。監査請求自体は棄却されましたが、監査委員会の調査の結果、マスコミで報道されていた疑惑(書類が正規の書類であり、捜査用報償費の領収書が偽造されたものであったこと等)が事実であったことが確認されました。


 マスコミが大きく取り上げ、多数の弁護士がこの問題に取り組む中で、次々と実名による内部告発者が現れました。道警の元最高幹部(元釧路方面本部長)であった原田氏と実際に裏金作りを担当(元弟子屈警察署次長)した斉藤氏です。
  この2人が、道警における報償費の不正支出の実態を明らかにしたこともあり、道警本部も疑惑の事実を否定することができず、疑惑を解明するという姿勢に立たざるを得ない状況に追い込まれました。


 北海道に続き、静岡、京都、福岡等全国各地で警察における報償費等の不正支出が次々と明らかになりました。これまでも警察の不正が明らかになることはありましたが、これだけ、全国各地で、しかも、明確な資料に基づき明らかになることはなかったことです。


 本年6月30日に発表された特別監査では、平成10年から平成12年にかけて旭川中央署及び弟子屈署で執行された捜査用報償費の領収書が全て偽造されたものであることが明らかになりましたし、道警が報償費等の支出手続を改めたとされる平成13年以降についても「執行の事実が確認できない」ものが多数認められました。
 監査を進めると、疑惑が深まる一方で、その底が全く見えないのが実態です。


▲ 2003年12月4日しんぶん赤旗

 近年、警察の犯罪の検挙率が大きく下がって来ています。重要犯罪で見た場合、平成10年には90%を越えていた検挙率が平成14年には60%を下回っています。
 疑惑の解明が進む中で、不正に支出されたお金の少なくない額が幹部の交際費にあてられたことが明らかになっています。これでは、現場の警察官の士気が上がるわけがありません。警察の不正を明らかにしていくことは、現場の警察官を励まし、私たちの生活の安全を護ることにもつながります。
 相手が警察ですから、疑惑の解明が容易に進むとは思えませんが、今後とも、皆さんも警察の不正問題に注目してください。


「8 マイル」

 白人ヒップ・ホップのスーパースター、エミネム主演の自伝的映画である。デトロイトの中心地から8マイル離れた黒人居住区と接する白人低所得者層の居住区に、離婚した母親と幼い妹と三人でトレーラー住まいをしているB・ラビット(エミネム)の挫折と再生を描く青春映画。通勤バスの中で作詞に熱中するラビット。男をくわえ込む母親、事故の補償金をあてにし、いい仕事につけないラビットを罵倒する男。安定を求める元恋人。
 八方塞りの日常のフラストレーションをバトル・ステージでどうぶつけたらいいのか分からないラビットは、彼を担ぐ友達に後押しされラップのライブ・バトル・ステージ「シェルター」に登場するが一言も発することができず敗退してしまう。一瞬で恋に落ちた彼女はニューヨークを目指し、そのためには誰と寝ることも厭わない。彼女を寝取られた格好となったラビットは相手の鼻をへし折り、相手の所属するギャンググループに袋叩きにされる。よれよれになったラビットに彼女が告げる。「私は旅立つ。今夜シェルターに出てほしいけど。怖い?」。
 渦巻く言い知れぬ怒りを胸にラビットは気力を振り絞ってバトル・ステージへ向かう。彼は同時代の支持を得ることができるか。私は打ち震えるほど感動したが、ゼミの学生たちは厳しい目を向ける……。毀誉褒貶の青春映画。


弁護士紹介取扱分野Q&A