北海道、札幌を中心とした北海道合同法律事務所が発行する「事務所通信:北の峰」の2003年 新春号をご紹介致します。

 北の峰のご案内


 北朝鮮は、これまで「でっち上げ」だとして否定してきた拉致の事実を認め、謝罪しました。しかし、同時に明らかにされた事実はあまりにも衝撃的でした。
 これまで、拉致被害者の家族の訴えに対する国民の関心は、私たち自身も含めて決して高いとはいえませんでした。それだけに家族は孤立した闘いを強いられて来ました。それが、やっと報われると思ったのも束の間のことでした。
 生存被害者5人は、一時帰国することができましたが、北朝鮮に残してきた子どもなど家族との再会はいまだ実現していません。「死亡した」とされる8人の拉致被害者や数十名に及ぶと見られるその他の拉致被害者の行方もいまだ闇の中にあります。
 20数年にもわたり肉親と引き裂かれた被害者と家族の苦悩は何ものにもたとえようがありません。
 拉致という国家犯罪を認めた以上、北朝鮮には、真相を明らかにし、全面解決に向けて最大限の努力をする義務があります。ところが、「拉致問題は解決済み」として、日本政府が、一時帰国した被害者を帰国させないことを「背信行為」などと非難しています。北朝鮮のこのような態度を到底認めるわけにはいきません。
 一方、北朝鮮に対し武力行使を唱えるような非常識な論調も一部見受けられます。あるいは、一切の援助を打ち切り、北朝鮮を追い詰めれば、政権は崩壊し、拉致問題が解決するかのような安易な論調もあります。しかし強行論だけでは、拉致問題を解決することは難しいと思います。北朝鮮という国を国際社会の中に引き出して、国際世論と支持の中で粘り強い交渉をしていくほかないのではないでしょうか。
ところで、拉致問題を考えるとき、かつて日本政府が、朝鮮の人たちを、強制的に拉致して労働させ、あるいは従軍慰安婦とし働かせたことも忘れてはならないと思います。そのことの反省を欠いていては、拉致問題について、国際的な支持、協力を得ることはできないと思います。
また、この拉致問題をきっかけに、在日朝鮮人の人たちに対し、いじめや、いやがらせが相次いでいるようです。本当になさけない話です。
 私たちは、今こそ平和憲法の精神に則って、この問題に取り組むべきではないでしょうか。

2003年 新春 北海道合同法律事務所一同

― イージス艦派遣は、イラク攻撃の共同作戦体制の一環


◆ いまアラビア海で何が
 昨年12月5日、政府は海上自衛隊の最新鋭イージス護衛艦を、テロ対策特別措置法に基づく対米支援活動の一環だとして、インド洋に派遣することを決定した。
 これまで海自は、補給艦1〜2隻、護衛艦2〜3隻の体制を維持し、アラビア海沿岸国で燃料を買いつけ、同海北部の洋上で待機。一昨年12月から昨年11月中旬までに米軍や英国軍の艦艇に対して、延べ140回、80数億円を無償で提供した。


◆ イージス艦派遣の目的
 今回派遣したイージス艦は、その戦闘能力において通常護衛艦をはるかに凌ぐ性能を持ち、特に収集情報は全てデータリング・システムで自動的に米軍に渡され、同時に指令システムに組み込まれ、米軍と共に戦争、すなわち集団的自衛権を行使するものである。米国以外にはスペインと日本しか保有していない。
 こうした能力を備えるイージス艦を日本がインド洋に派遣することは、イラクヘの先制攻撃を窺う米国にとって、頼もしい助っ人である。なぜならば、現在、オマーン湾などで対テロ組織の海上阻止行動に従事する米軍艦艇は、イラク攻撃が開始されればぺルシャ湾(クウェート方面)にシフトするであろう。この時に、オマーン湾にいた米軍の「穴埋め」をする恰好の代役となる。日米両政府とも表向きは語らないが、軍事専門家の間では常識化した見方なのである。


◆ 有事法制の先取り
 有事立法三法案が、国民的批判の前に昨年の通常国会・臨時国会と続けて継続審議とされ、立法化が阻まれている段階で、イージス艦派遣は、政府がそれを先取りしたものに他ならない。
 米国が狙う無法なイラクヘの武力攻撃に日本政府が公然と手を貸すことに厳しく抗議するとともに、有事法制を廃案にするために全力を尽くしましょう。


◆ 深刻な労働者の状態
 容赦無い「勝ち残り」競争を旗印とした政府財界による空前のリストラ攻撃のもとで、労働者の状態悪化は極めて深刻になっています。リストラ解雇、賃金・退職金の切下げや未払いが横行する一方で、雇用保険改悪による受給者の減少、健康保険の本人負担増など社会保障の大幅後退で、労働者は「泣きっ面に蜂」です。特に、今春卒業の高校生の就職内定率が全国で50%、北海道は25%にすぎないと聞くと、本当に胸が痛みます。
 労働者の苦しみの根源は、大企業には惜しみなく公金を注ぎ込んで「リストラ」支援を行い、国民には見返りのない犠牲を強いる小泉「構造改革」路線にあります。


◆ 国策リストラのNTT
 その典型は、NTTの東西会社による11万人リストラ計画です。基幹業務について、100%子会社を新設して外注化し、それに伴い51歳以上の社員を退職させ、新設子会社に3割以上賃金を切り下げて再雇用するというものです。
 これは、定年を60歳以上と定めた高齢者等雇用安定法や自ら60歳と定めている就業規則に反する脱法行為であり、事実上の50歳定年制にほかなりません。労働契約承継法が定める企業再編に伴う不利益変更禁止の原則にも反します。
 NTTは、世界1000社番付でフォード・モーターに続く世界第二位であり、その隠し利益(内部留保)は韓国の国家予算である約9兆円(1999年)に匹敵する大企業です。国が株式の約半分を保有する事実上の国営企業でもあり、このNTTのやり方がまかり通るならば、あの国鉄の分割民営化と同様に、全国至る所で悪用されるに違いありません。


◆ 報復・見せしめ配転まで
 しかも、子会社への転籍を拒否した社員に対しては、単身赴任を強いる遠距離配転を行いました。NTTは、全国津々浦々に営業所や施設があり、平社員を遠距離配転すべき業務上の必要性はありません。
 会社のリストラ計画に従わなかった社員に対する報復であると同時に、毎年出てくる51歳社員に対して「会社に従わなければ、こういう酷い目に遇うぞ」という見せしめにほかなりません。
 卑劣な会社の体質を如実に示すと同時に、家庭内における男女平等や夫婦の同居義務を定めた憲法・民法、さらには育児介護休業法や家族的責任を有する男女労働者の機会及び待遇の均等に関する条約(ILO156号)など、労働者が人間らしく働くための労働条件に関する国際基準にも真っ向から違反するものです。
 企業活動について「国際基準」を声高に言うのならば、労働条件についてもそうあるべきではないでしょうか。


◆ 国民的反撃を
 NTTでは、昨年9月から12月にかけて31名が全国六裁判所で配転無効を求める裁判に立ち上がりました。北海道では、札幌から東京、函館、室蘭、苫小牧、釧路への勤務を命ぜられた通信労組の五人の労働者が提訴しました。理不尽なリストラを撤回させるたたかいが開始されたのです。
 闘ってこそ道は開かれる― N T T ―をはじめ、企業の理不尽なリストラに対し、職場及び地域をたたかいの拠点にして、一大国民生活擁護闘争として、反撃に打って出ていこうではありませんか。


 前頁のとおり、現在、多くの労働者は、リストラ解雇、賃金・退職金等の労働条件の大幅切り下げや未払など、過酷な状況を強いられています。当事務所では、これらのみなさんの権利を守るため、地方労働委員会、裁判所などで多数の事件を争っています。近時、裁判所の反動傾向が著しいので、その問題点も含めいくつかの事件をご紹介いたします。


◆ 国鉄闘争 弁護士 内田 信也
 2002年10月24日、東京高等裁判所(村上裁判長)で、全動労採用差別事件の控訴審判決があり、最大の争点であった「JRの使用者性」について、日本の裁判所として初めてこれを肯定した。すなわち、「採用手続の過程において不当労働行為があったときは、JRは、当該不当労働行為に積極的に関与したか否かにかかわらず、不当労働行為責任を免れない。」というのである。
 そして、不採用になった組合員は「分割民営化に反対した全動労に所属していたから差別された」ことも認めた。
 ところが、判決は「しかしながら」と続き、「国鉄分割民営化は、国是であり、全動労のように、それに反対するような 全動労組合員は、たとえ業務知識・技能・経験・実績等の面においては遜色がなくても、差別されても当然である。」と言って、不当労働行為であることを否定したのである。
 この論理が認められれば、全国で吹き荒れるリストラ・人減らしの嵐において、会社に楯突いていた労働者は全て排除されることになる。裁判所は人権の砦であることを放棄し、企業の本音の代弁者に成り下がった。今、時代は暗黒へ、社会は崩壊へ確実に向かっている。


◆ 渡島信金 弁護士 佐藤 博文
 昨年は、渡島信金理事者による不当労働行為・人権侵害を救済する判決が相次いで出され、確定した。
 2月には、組合に対する相次ぐ不当労働行為を認めた地労委命令が、最高裁決定で確定した。
 3月には、それについて組合が金庫に対して起こした損害賠償請求訴訟について、札幌高裁が220万円の賠償を命じ、確定した。
 6月には、懲戒解雇された組合の加藤副委員長の解雇無効が最高裁決定で確定した。
 9月には、組合に加入した途端に降格・減給・遠隔地配転を命ぜられた星野組合員に対する、減給・配転の無効確認と損害賠償請求が函館地裁で認められた。
 このように、わずか4人の組合ではあるが、不屈にたたかい抜いているのが渡島信金労組である。
 これに対して、渡島信金理事者は、加藤副委員長の解雇無効が確定したのに、未だ職場に復帰させず、これ自体が不当労働行為であるとして、組合が地労委に救済申立しているという事態である。呆れてものも言う気になれないとは、このことであろう。地域経済・地場産業を支えるべき金融機関の経営者として、全く失格である。


◆ 共同交通(株)不当労働行為事件 弁護士 川上 有
  タクシー会社である共同交通が、平成13年5月、大幅な賃下げを主たる内容とする新賃金体系・新勤務体系を、就業規則の変更なしに、一方的に押しつけ強行実施した。会社提案があまりにひどい内容であったことから、それまで未組織であった労働者も結集し、新労組を設立し、労働者の過半数を超える大勢力による反対運動が組織され、直ちに地労委に対する不当労働行為救済申立てを行った。会社側は、これほど強硬な反対にあわて、これを制圧すべく、意思確認と称して個別に労働者を呼び出し、労組脱会と個別協定締結を迫り、これに応じなければ賞与を支払わないという、あからさまな不当労働行為を行った。地労委は、平成14年7月9日、労組側の申立てをほぼ全面的に認める完全勝訴的命令を出した。しかし、このときせっかく労組として結集した労働者は大幅に切り崩され、半減と言う状態に陥っていた。他方、会社側は、同命令を不服として中労委に再審査請求を行い、現在調査が行われている最中である。しかし、会社の不当労働行為性は顕著であり、労組側は単に不当労働行為の問題に収束させることなく、同行為が不法行為を構成するものとして、平成14年12月、1億円を超える損害賠償請求を札幌地裁に提訴した。


◆ ラクリン解雇事件 弁護士 三津橋 彬
 ラクリン氏は平成4年9月、札幌交響楽団から招聘され、シラキュース交響楽団ヴィオラ首席の地位を辞して、札響のヴィオラ首席奏者となりました。ラクリン氏は札響のヴィオラパートの向上につとめ、成果をあげました。ところがヴィオラの副首席奏者が、理事者にラクリン氏とは一緒に仕事をできないと執拗に讒言しました。ラクリン氏は平成10年4月解雇されました。ラクリン氏が五弦のヴィオラを弾くことが「コミュニケーションを欠く」というのが解雇の理由でした(普通ヴィオラは四弦)。この事件の本質は、集団の中から異質の者を排除する労使ぐるみの「いじめ」にあります。理事者は、折しもラクリン氏を札響に紹介した指揮者秋山和慶氏が音楽アドバイザーを退任する時期に、五弦のヴィオラを使うラクリン氏を不当にも解雇したのです。ラクリン氏は現在、札幌高等裁判所で解雇無効を主張して闘っています。ヴィオラは地味な楽器で、ヴァイオリンのような華やかさはありません。でも五弦のヴィオラの燻銀のような落ち着いた音色は、多くの聴衆を魅了してきました。ラクリン氏の解雇は札響にとって損失であるばかりでなく、「異端排除」の人権侵害であり許すことはできません。


◆ 北海道交運・森好整理解雇事件 弁護士 佐藤 哲之
◇「森好整理解雇事件」とは?
 この事件は北海道最大手のタクシー会社「交通グループ」で起きました。無線センターにGPSシステム(衛星通信回線を利用することによって、電話で配車を求めてきた顧客に、自動的に最も近い空車を配車できるようにするシステム)を導入したことによって、それまでの26人体制から20人体制にすることができるようになったということで、予め希望退職を募るということもせず、1999年1月26日、突如、「成績のよくない」6人に退職を勧めてきました。6人のうち、1人は定年間近であったため退職し、4人が元の職場である乗務員に戻ったのですが、1人残った森好久子さん(58歳)に対し、同月29日、十分な説明や労働組合との交渉もしないまま、一方的に同年2月28日付解雇を言い渡したのです。

◇裁判では!?
 森好さんと組合はこれに納得できず、裁判でたたかいました。森好さんの生活と生きがいを奪われてはならないことはもちろんですが、会社は森好さん1人雇えないような経営状況ではないと公言していましたので、このような解雇を認めては、これまで労働者がたたかって「整理解雇の四要件」など、さまざまな解雇規制のための法理を確立してきたのにそれが切り崩されてしまうと考えたからです。
 しかし、残念ながら、裁判所は、他に配転すべき適当な職場もないので、会社が解雇回避の努力を尽くしていないとはいえないという「理屈」でこの会社の無法な解雇を容認してしまいました。(2002年10月25日最高裁)


◆ 中標津サン薬局 不当労働行為事件 弁護士 渡辺 達生
 中標津サン薬局は、根室管内最大の病院である町立中標津病院に隣接して設置されている管内最大の調剤薬局です。
 サン薬局では、休憩時間の外出が制限される、残業代が一部しか払われない、有給の取得に制限を加える等の労働基準法を無視した労働条件が押しつけられると共に、労働者間に相互監視をさせる陰湿な労務管理が行われてきました。このような状態の中で、「会社に笑顔をとり戻そう」という思いで、平成14年4月、中標津サン薬局労働組合(組合)が結成されました。
 組合の結成直後から、書記長に対する退職干渉、組合員に対する嫌がらせ、不誠実団交、組合員に対する不当解雇等、不当労働行為の連続ですが、23歳の女性の委員長を先頭に、地域でも支援の輪を広げると共に、地労委への救済命令の申立、解雇無効の仮処分の申立等の法的な手続きをとる等の戦いを進めています。
 できたばかりの若い組合です。皆さん、是非、ご支援をお寄せください。


「半落ち」 横山秀夫 (講談社)

 不治の病の自分の妻を絞殺して自首して来た警官。しかし自首は二日後。死に場を求めてさ迷ったという供述は、「真実を語っていない」。被疑者は全面自供ではない「半落ち」だ。真実の供述を求めて迫る6人の男、刑事、検事、弁護士、新聞記者、裁判官、刑務官。語られなければ真実にたどり着かないこともある。「陰の季節」「動機」という傑作を持つ名手、横山秀夫を是非体験して下さい。


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